「再雇用後の給料は今の半分と言われたけれど、これは普通なの?」
「違法ではないのか、補ってくれる制度はないの?」
こうした疑問で検索する方は、多いはずです。
先に要点をお伝えします。定年後の再雇用社員(正社員以外)の53.7%は、月給が定年時の6割未満に下がっています。半分程度は、珍しくない水準です。
ただし、違法かどうかは減額の割合では決まりません。仕事内容や責任、異動の範囲などによる個別判断です。補う制度としては、60歳到達日が2025年4月1日以降の方なら、高年齢雇用継続給付が賃金の最大10%支給されます。
そこで本記事では、以下の内容について詳しく解説します。
- 再雇用後の給与相場とボーナスの実態
- 給料が半分に下がる3つの理由
- 違法になるかどうかの判断基準
- 高年齢雇用継続給付の受給額と申請方法
- 契約前に取れる3つの対策
制度の数値は2026年10月時点のものです。契約書にサインする前の判断材料として、ぜひ参考にしてみてください。
再雇用で給料が半分になるのは普通?給与相場を解説
同僚が6割で自分が5割でも、どちらも統計の範囲内に収まります。平均値は会社ごとのばらつきを隠すため、数字の分布を見ることが近道です。
相場は、次の3つの数字で確認できます。
- 再雇用後の給料は定年前の何割になる?
- 60歳以降の月給・年収の平均はいくら?
- 再雇用後のボーナスはどのくらいもらえる?
定年前との比率から確認します。
再雇用後の給料は定年前の何割になる?
労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査が、実態を最も細かく示しています。定年後の再雇用社員643人に、毎月の所定内給与が定年時の何割になったかを尋ねました。最多は「6割未満」で53.7%、半数を超えます。
「6〜7割未満」は18.7%、「7〜8割未満」は12.3%でした。減少した人の合計は90.7%にのぼります。
| 定年時を100%とした所定内給与 | 割合 |
|---|---|
| 60%未満 | 53.7% |
| 60%以上70%未満 | 18.7% |
| 70%以上80%未満 | 12.3% |
| 80%以上90%未満 | 4.0% |
| 90%以上100%未満 | 2.0% |
| 同額 | 8.7% |
| 増加 | 0.6% |
参考:JILPT 調査シリーズNo.252(2025年)※実査は2023年9月、対象は正社員以外の再雇用社員
注意したいのは、区分が「6割未満」までしかない点です。ちょうど半分以下の割合は公表されていません。「半分」と「6割」の間には、この調査では見分けられない差があります。
60歳以降の月給・年収の平均はいくら?
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2025年6月分・速報)によると、一般労働者の月給は次のとおりです。55〜59歳が39.6万円、60〜64歳が32.9万円、65〜69歳が28.5万円です。
60〜64歳は、55〜59歳の約83%にあたります。学歴別では高校卒が約86%、大学卒が約79%です。月給を12倍すると、60〜64歳は年換算で約395万円です(賞与は含みません)。
ただし、この83%を再雇用後の給与と読み替えてはいけません。異なる年齢層の平均を並べただけで、同じ人の定年前後を追った数字ではないからです。再雇用以外の働き方の人も含まれます。
| 年齢 | 月給(所定内給与) |
|---|---|
| 55〜59歳 | 39.6万円 |
| 60〜64歳 | 32.9万円 |
| 65〜69歳 | 28.5万円 |
引用:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査(速報)」※一般労働者・学歴計
自分の条件に近い物差しは、平均値より前節の「定年時との比率」です。
再雇用後のボーナスはどのくらいもらえる?
賞与の平均額を示す公的な統計は、今回の調査では確認できませんでした。代わりに、年収の落ち込みから傾向を読み取れます。賞与を含む税込み年収を尋ねると、「6割未満」に減った人は62.2%でした。
月給だけの53.7%より8.5ポイント高い数字です。賞与の落ち込みが月給より大きい人が、一定数いると読み取れます。
賞与は、月例賃金とは別に支給される一時金です。出るかどうか、どう算定するかは、会社の規程と契約で決まります。まず確かめたいのは、再雇用後の支給の有無と算定方法です。
なお、賞与が出ないというだけで、直ちに違法と決まるわけではありません。最高裁は、賞与の性質と支給の目的を踏まえて判断する立場です。詳しくは違法性の章で扱います。
再雇用で給料が半分に下がる3つの理由
会社が再雇用で給与を下げる背景には、3つの要因があります。要因ごとに当てはまるかを確かめておくと、交渉の材料が整うのです。
減額の背景は、次の3つです。
- 役職や業務上の責任が変わるため
- 再雇用後は別の給与体系が適用されるため
- 勤務時間や勤務日数が減るため
役職や責任の変化から確認します。
役職や業務上の責任が変わるため
再雇用で役割が変わり、責任が軽くなる会社は少なくありません。JILPTの企業調査(2019年)は、60歳定年制の企業に再雇用後の仕事を尋ねました。
「定年前と同じ仕事だが責任が軽くなる」が46.1%で最多です。「まったく同じ仕事」は36.5%、「一部または全く異なる仕事」は合わせて約7%にとどまります。
3社に1社強は、再雇用後もまったく同じ仕事を任せています。働く側の回答でも、職務の内容も異動・昇進の範囲も変わらない再雇用社員が36.5%です。
責任の軽さを理由に下げるなら、減額には筋が通ります。問題は、責任がほぼ変わらないのに下げるケースです。そこで給与だけが下がるなら、会社に理由を聞く価値があります。
再雇用後は別の給与体系が適用されるため
再雇用は、定年退職のあと、期間の定めのある新しい契約で働き続ける形が大半です。前出の労働者調査では、再雇用社員の94.9%が有期契約でした。契約が新しくなるため、給与の決め方も正社員の時とは別に定められます。
背景の一つが、総収入ベースの設計です。JILPTの報告書は、再雇用社員に特有の待遇取扱いがあったと記しています。
退職金、老齢厚生年金、企業年金、高年齢雇用継続給付などを含めて、総収入で考える設計です。会社が年金や給付金を織り込んで月給を決めているケースがある、と読み取れます。
この前提は揺らぎ始めています。老齢厚生年金を受け取れる年齢は、男性が2025年度以降、原則65歳になりました。同じ報告書は、再雇用を理由にした大幅減額への理解は得にくくなるとの見方も載せています。
勤務時間や勤務日数が減るため
労働時間が短くなれば、その分の賃金が下がるのは自然な流れです。ただ、実態は想像と違います。
再雇用社員の所定労働時間は、週30時間以上が78.8%を占めます。正社員と比べても、「同じか長い」が65.3%で、「短い」は31.4%でした。
つまり、正社員より短く働く人は約3割です。約7割は、正社員と同じかそれ以上の時間で働いています。
しかも、職務も異動の範囲も変わらず、労働時間も正社員と同じか長い人(157人)でも、79.0%は所定内給与が減っています。勤務時間が減っていないのに半分になっている場合は、時間以外の理由を会社に確認しましょう。
再雇用で給料が半分になるのは違法?同一労働同一賃金の判断基準
結論は「割合だけでは決まらない」です。パートタイム・有期雇用労働法8条は、有期雇用の労働者について、正社員との不合理な待遇差を禁じています。
判断の軸は3つ、職務の内容、職務の内容と配置の変更の範囲、その他の事情です。再雇用社員も、この法律の対象に入ります。
違法かどうかの判断軸は、次の3つです。
- 正社員と仕事内容・責任の程度に違いがあるか
- 正社員と配置転換・異動の範囲に違いがあるか
- 基本給・賞与・手当の支給目的に違いがあるか
仕事内容と責任の違いから確認します。
正社員と仕事内容・責任の程度に違いがあるか
1つ目の軸は、仕事の内容と責任の重さです。厚生労働省の指針は、職務内容などに相違があるなら、その相違に応じた賃金の差は許容されるとしています。逆に言えば、同じ仕事・同じ責任なら、差の理由が問われやすくなります。
再雇用社員の実態を、仕事の変化別に見てみましょう。
| 再雇用前後の変化 | 所定内給与が6割未満に減った割合 |
|---|---|
| 職務も異動・昇進の範囲も変わらない | 37.4% |
| 異動・昇進の範囲のみ変わった | 53.1% |
| 職務のみ変わった | 66.7% |
| どちらも変わった | 71.7% |
参考:JILPT 調査シリーズNo.252(2025年)※「職務のみ変わった」はn=42と少数
仕事が変わるほど、下がりやすい傾向です。一方、何も変わらない人でも、37.4%は6割未満に下がっています。
正社員と配置転換・異動の範囲に違いがあるか
2つ目の軸は、転勤や異動、昇進の範囲です。定年前の正社員に転勤や職種変更、昇進の可能性があり、再雇用後はそれがなくなる。この場合、「変更の範囲」に違いがあることになり、賃金差を説明する材料です。
前節の表で、異動・昇進の有無や範囲だけが変わった人の53.1%は、6割未満に下がっていました。仕事の中身が同じでも、異動や昇進の道が閉じると、半数を超える人が6割未満です。
自分の場合を確かめるには、定年前に実際の異動や転勤があったかを振り返ります。辞令などの人事記録が手がかりです。
基本給・賞与・手当の支給目的に違いがあるか
3つ目の軸が、その他の事情です。賃金の項目ごとに、何のために払われているかを見ます。
厚生労働省の指針には、定年後の継続雇用であることは「その他の事情」として考慮されうると書かれています。ただし、継続雇用であるというだけで、直ちに不合理でないと認められるわけではありません。
最高裁の判断も、項目ごとに分かれます。長澤運輸事件(2018年)では、定年後の嘱託乗務員の基本給と賞与は不合理でないとされました。
一方で、精皆勤手当と超勤手当は不合理とされています。名古屋自動車学校事件(2023年)では、基本給と賞与について高裁の判断が破棄され、差し戻されました。
結局、月給が半分だから違法、とは言えません。基本給・賞与・手当のそれぞれで、目的と差の合理性が問われます。
厚生労働省の審議会は、2025年から裁判例を踏まえた指針の見直しを議論中です。結論が変わる可能性があります。
再雇用で給料が半分になった場合に使える高年齢雇用継続給付金
給付金は、下がった賃金を一部補う雇用保険の制度です。本人に直接支給されます。
給付金の確認事項は、次の3つです。
- 高年齢雇用継続給付金の受給条件
- 2026年の支給率と給料が半分になった場合の受給額
- 高年齢雇用継続給付金の申請方法と期限
受給条件から確認します。
高年齢雇用継続給付金の受給条件
対象は、60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者です。条件は3つあります。
- 60歳に到達した時点(または被保険者期間が5年に達した日)で、被保険者期間が5年以上あること
- 60歳到達前6か月の平均賃金(賃金月額)と比べ、各月の賃金が75%未満に下がっていること
- 各月の賃金が397,369円(2026年8月1日改定)を超えないこと
この金額は毎年8月に変わります。
2つ目の「下がった状態」は、各月の賃金を60歳到達時の賃金月額で割った低下率で測ります。60歳時が40万円で再雇用後が20万円なら、低下率は50%です。給料が半分なら、この条件は満たします。
制度の目的は、65歳までの雇用の継続を後押しすることにあります。支給の対象は、65歳になるまでです。
2026年の支給率と給料が半分になった場合の受給額
支給率は、60歳に到達した日で決まります。2025年4月1日以降に60歳になった方は、賃金が60歳時の64%以下なら、各月賃金の10%です。
64%超75%未満では10%から0%の間で逓減し、75%以上は支給されません。2025年3月31日以前に60歳になった方は、従来の61%以下で15%のままです。60歳時の月給が40万円のモデルで試算します。
| 再雇用後の賃金 | 60歳時比 | 支給率 | 給付額 | 賃金+給付額 |
|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 50% | 10% | 2万円 | 22万円 |
| 24万円 | 60% | 10% | 2.4万円 | 26.4万円 |
| 28万円 | 70% | 4.16% | 約1.2万円 | 約29.2万円 |
| 30万円 | 75% | 0% | 0円 | 30万円 |
参考:厚生労働省リーフレット「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」※2026年10月時点。金額は計算例
半分の20万円なら、月2万円、年24万円が上乗せされます。60歳到達日が旧ルールの対象なら、同じ半分で月3万円(15%)でした。
高年齢雇用継続給付金の申請方法と期限
申請先は、事業所の所在地を管轄するハローワークです。提出は原則として事業主が行います。
本人が申請することも可能です。電子申請にも対応しています。
初回の期限は、最初に支給を受けようとする支給対象月の初日から4か月以内です。2回目以降は、「次回支給申請日指定通知書」に書かれた月に提出します。
初回に必要な書類は次のとおりです。
- 支給申請書(初回は受給資格確認票を兼ねた様式)
- 払渡希望金融機関指定届
- 六十歳到達時等賃金証明書
- 賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など
- 年齢を確認できる書類(運転免許証や住民票の写し)
引用:ハローワークインターネットサービス「高年齢雇用継続給付」※更新日の記載なし。申請前に管轄のハローワークで確認する
会社の手続きに任せる場合も、4か月の期限は自分で押さえておきましょう。
再雇用で給料が半分になる場合の3つの対策
給付金で補えるのは、減った分の一部にすぎません。残りは、家計の組み直しと会社との話し合い、働き方の見直しで埋めていきます。
対策は、次の3つです。
- 再雇用後の年収・手取りと家計への影響を試算する
- 給与の算定根拠を確認して会社と条件交渉する
- 定年延長・転職など再雇用以外の働き方を検討する
収支の試算から確認します。
再雇用後の年収・手取りと家計への影響を試算する
最初にやるのは、再雇用後の収支を数字にすることです。前章のモデルなら、月20万円の賃金に給付2万円が乗って、月22万円、年264万円を見込めます。
ここから社会保険料と税が引かれた額が、実際の手取りです。保険料率は加入する健康保険で違うため、給与明細の控除額で確かめます。
見落としやすい手続きが、再雇用の初月から社会保険料を下げる同日得喪です。60歳以上で退職後すぐ再雇用される場合、会社が資格喪失届と取得届を同時に出せば、再雇用後の給与に応じた標準報酬月額が再雇用月から適用されます。
手続きは会社が行うため、人事担当への依頼が必要です。一方で、標準報酬月額が下がると、将来の老齢厚生年金額の計算にも反映されます。
試算表には、次の項目を並べておくと判断しやすくなります。
- 手取り月額と給付金額
- 住宅ローンの月返済額と残る期間
- 教育費がかかる期間
- 生活費の固定費
- 65歳までに不足する金額
給与の算定根拠を確認して会社と条件交渉する
条件に納得できないなら、根拠を聞くところが出発点です。パートタイム・有期雇用労働法14条2項は、有期雇用の労働者から求めがあれば、正社員との待遇の違いの内容と理由を説明するよう会社に義務づけています。説明を求めたことを理由とする不利益な取扱いは、同条3項で禁じられています。
聞く項目は、次のとおりです。
- 給与額の算定方法(賃金テーブルや等級)
- 職務内容と責任の範囲
- 異動の有無と範囲
- 賞与の有無と算定方法
- 評価制度
同じ仕事なのに半分になる場合は、職務内容の違いを示してもらいます。交渉の相手は人事部です。
社内で解決しない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が、パートタイム・有期雇用労働法に基づく待遇差の相談を無料で受け付けています。個別の判断は、社会保険労務士や弁護士に相談するのが確実です。
定年延長・転職など再雇用以外の働き方を検討する
再雇用を受け入れる以外の道も、数字で確かめておきます。厚生労働省の2025年の調査(6月1日現在)では、65歳以上定年の企業は定年廃止を含めて34.9%でした。
65歳までの雇用確保措置の内訳は、継続雇用制度が65.1%、定年引上げが31.0%です。70歳までの就業確保措置を実施する企業も34.8%です。
JILPTの企業調査では、65歳定年の企業の約7割が、60歳頃とまったく同じ仕事を任せています。賃金の下がり幅も小さいと、報告書は推測しています。転職先を探すなら、65歳定年や定年のない会社が候補です。
再雇用を選ばずに退職する場合は、雇用保険の基本手当(失業給付)の対象になりえます。給付日数や金額は、年齢や被保険者期間で変わります。退職前にハローワークで確認しましょう。
まとめ|再雇用で給料が半分になる場合は相場や減額理由を確認して対策しよう
再雇用で月給が6割未満になる方は、53.7%にのぼります。半分は、相場の範囲に収まる数字です。
ただし、違法かどうかは割合では決まりません。仕事内容、責任、異動の範囲、手当の目的が問われます。何も変わらないのに半分になるなら、説明を求める根拠があります。
動くなら、契約書にサインする前です。次の3つを順に進めましょう。
- 給与の算定根拠と職務内容を、書面か面談で確認する
- 給付金込みの月収・年収を試算し、ローンや教育費と照らす
- 納得できなければ、条件の見直しを人事に相談し、必要なら労働局や専門家に聞く
減額の理由と使える制度が見えれば、受け入れるか交渉するかを、数字で決められます。
