MENU

振替加算がずるいと言われる理由とは?もらえない人の条件や金額・確認方法を解説

振替加算 ずるい

年金の説明を受けていると、「振替加算」という言葉が出てきます。専業主婦だった知人は受け取れるのに、自分は対象外だと告げられる。

長く働き、保険料を納めてきたのに、なぜ差がつくのか。納得がいかないのは自然な反応です。

ただ、額を知ると印象は変わります。昭和36年4月2日から昭和41年4月1日生まれの振替加算は、年額16,335円、月額に直すと1,361円です。月に数万円という話ではありません。

対象かどうかは、3つの問いで判定できます。

  1. 1966年4月1日までに生まれたか。
  2. 自分の厚生年金などの加入期間が、240月(原則20年)未満か。
  3. 配偶者(夫)の厚生年金などの加入期間が原則20年以上あり、生計を維持されていたか。

3つとも当てはまれば対象、1つでも外れれば対象外です。ここからは、「ずるい」と言われる理由、制度の目的、条件の詳細、金額、よくある疑問の順に整理します。数字は日本年金機構の公表内容によるものです(2026年10月時点)。

目次

振替加算が「ずるい」と言われる3つの理由

不公平に見える原因は、3つに絞れます。ここでは要点だけを示し、詳しい仕組みは後続の見出しで扱います。

内訳は、次の3つです。

  1. 厚生年金の加入期間が長い共働きの人は対象外になりやすいため
  2. 生年月日が1966年4月2日以降の人は対象外になるため
  3. 生年月日が若いほど振替加算の金額が少なくなるため

まず、共働きで厚生年金が長い人の場合です。

厚生年金の加入期間が長い共働きの人は対象外になりやすいため

振替加算の対象になるのは、厚生年金保険と共済組合等の加入期間の合計が240月(20年)未満の人です。

長く会社勤めをした共働きの人は、この線を超えやすくなります。厚生年金に25年(300月)加入していれば、その時点で対象外です。

専業主婦期間が長かった人との差は、ここで生まれます。ただし、共働きなら全員が対象外というわけではありません。加入期間が240月に届かなければ、対象になる余地は残ります。

生年月日が1966年4月2日以降の人は対象外になるため

対象は、大正15年4月2日から昭和41年4月1日までに生まれた人に限られます。西暦なら、1926年4月2日から1966年4月1日です。

1966年4月2日以降の生まれは、額がゼロです。いま50代の人は、加入期間に関係なく、生年月日の時点で対象外。

「自分だけもらえない」のではなく、世代ごと外れています。この点は分けて考えたいところです。

生年月日が若いほど振替加算の金額が少なくなるため

最高額は、昭和2年4月1日までに生まれた人の年額243,100円(月額20,258円)です。そこから生年月日が若くなるごとに、額は減っていきます。

昭和36年4月2日から昭和41年4月1日生まれは、年額16,335円(月額1,361円)。最高額の1割に満たない水準です。

「月額数万円」の振替加算は、表の最高額を超えるため成立しません。専業主婦だった知人が受け取る額も、実際には生年月日に応じた小さな額のはずです。

振替加算はなぜある?制度の目的と共働きが対象外になる理由

振替加算は、優遇のために作られた制度ではありません。年金額が低くなる世代を補うための、期間限定の加算です。

順に確認するのは、次の3点です。

  1. 旧制度で専業主婦が国民年金に任意加入だった背景
  2. 国民年金の加入期間が短い世代の基礎年金を補う目的
  3. 厚生年金の加入期間が原則20年以上ある人を対象外とする考え方

最初は、旧制度の任意加入です。

旧制度で専業主婦が国民年金に任意加入だった背景

昭和61年(1986年)4月に基礎年金の仕組みが始まる前、会社員に扶養される妻は、国民年金に入るかどうかを自分で選ぶ立場でした。希望した人だけが任意加入する形です。

任意加入をしなかった人は、その分だけ国民年金の加入期間が短くなります。その結果、この世代の専業主婦は、65歳からの老齢基礎年金が低額にとどまる場合がありました。

昭和61年4月からは、扶養される配偶者も第3号被保険者として国民年金に加入する仕組みになりました。制度が変わっても、それ以前の空白は埋まりません。振替加算は、その穴を補うために昭和60年の改正で設けられた経過的な措置です。

国民年金の加入期間が短い世代の基礎年金を補う目的

日本年金機構の用語集は、振替加算を次のように位置づけています。国民年金への任意加入期間などで自分の公的年金の加入期間が短く、低額の老齢基礎年金しか受けられない人に配慮した制度、という説明です。

流れは単純です。夫の厚生年金に加給年金が付いていると、妻が65歳になるまで、その分が夫に上乗せされます。妻が65歳になると加給年金は終わり、代わりに妻自身の老齢基礎年金へ振替加算が加わります。

額は、生年月日が若いほど小さくなり、昭和41年4月2日以降の生まれはゼロです。世代を区切った、経過的な仕組みです。

厚生年金の加入期間が原則20年以上ある人を対象外とする考え方

対象外になる分かれ目は、厚生年金の加入期間240月(20年)。

加給年金にも、同じ線があります。配偶者が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金を受ける権利を持つとき、配偶者の加給年金は支給停止です。自分で厚生年金を積み上げた人は、自分の老齢厚生年金が老後の柱になるからです。

機構は、この線引きの理由を明記していません。ただ、仕組みを並べると、自分の年金が別にある人を対象にしない設計と読めます。

専業主婦に手厚いというより、自分の厚生年金を持つ人は別の形で報われる設計です。この点は、金額の比較で確かめられます。

振替加算をもらえる人・もらえない人の3つの条件

条件は3つです。すべてを満たした人だけが対象です。

確認する条件は、次のとおりです。

  1. 生年月日が1926年4月2日〜1966年4月1日である
  2. 自分の厚生年金などの加入期間が原則20年未満である
  3. 配偶者の厚生年金などの加入期間が原則20年以上あり、生計を維持されている

最初は、生年月日です。

生年月日が1926年4月2日〜1966年4月1日である

対象は、大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれた人に限られます。1966年4月2日以降の生まれは、ここで外れます。

2026年に60歳の人なら、1966年3月生まれが対象世代の最後の層。この人が65歳になるのは2031年3月です。

自分の厚生年金などの加入期間が原則20年未満である

老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金などを受ける場合は、厚生年金保険と共済組合等の加入期間の合計が240月未満でなければなりません。

昭和26年4月1日以前に生まれた人には、さらに別の基準があります。共済組合等を除いた厚生年金の35歳以降(夫は40歳以降)の加入期間が、生年月日ごとの基準を下回ることです。

生年月日35歳以降の厚生年金の加入期間(未満)
昭和22年4月1日以前180月(15年)
昭和22年4月2日〜23年4月1日192月(16年)
昭和23年4月2日〜24年4月1日204月(17年)
昭和24年4月2日〜25年4月1日216月(18年)
昭和25年4月2日〜26年4月1日228月(19年)

昭和27年以降の生まれには、この表は関係しません。見るのは、原則の240月だけです。厚生年金に25年(300月)加入している人は、ここで対象外です。

配偶者の厚生年金などの加入期間が原則20年以上あり、生計を維持されている

振替加算の対象になるのは、通常、妻が老齢基礎年金を受ける資格を得た65歳のとき、夫の加給年金の対象になっていた人が基本の形。

加給年金は、厚生年金の被保険者期間が20年以上(特例あり)の人に、生計を維持されている配偶者がいるときに加算されます。夫の厚生年金の加入期間が短ければ、加給年金が付かず、振替加算も始まらない。

例外もあります。妻が65歳より後に老齢基礎年金の受給権を得た場合は、加給年金の対象でなくても、一定の要件を満たせば加算されます。

該当するのは、妻が年上の夫婦です。詳しくは、この後の質問の項目で扱います。

加給年金の額も、頭に入れておきたいところです。令和8年4月からは、配偶者243,800円に、夫の生年月日に応じた特別加算が付きます。

昭和18年4月2日以後生まれの夫なら、特別加算は179,900円で、合計423,700円。月に直すと約3.5万円です。

もう一点あります。妻が20年以上の老齢厚生年金を受ける権利を持つと、夫の配偶者加給年金は支給停止です。厚生年金に25年加入している妻の夫には、そもそも加給年金が付かない可能性が高いです。

振替加算の金額はいくら?生年月日による差と加給年金との違い

額は、生年月日で決まります。まず表を見るのが近道です。

金額は、次の3項目で確認します。

  1. 生年月日別の振替加算額の一覧表
  2. 加給年金と振替加算の金額の違い
  3. 共働きと片働きの年金額のモデル比較

最初は、生年月日別の一覧表です。

生年月日別の振替加算額の一覧表

日本年金機構の表では、昭和2年4月1日までの生まれが最高額で、以後は年齢が若くなるごとに減額されます。主な区分を抜き出しました。

配偶者の生年月日年額(円)月額(円)
昭和2年4月1日まで243,10020,258
昭和5年4月2日〜6年4月1日217,08818,090
昭和10年4月2日〜11年4月1日184,75615,396
昭和15年4月2日〜16年4月1日152,42412,702
昭和20年4月2日〜21年4月1日119,8489,987
昭和25年4月2日〜26年4月1日87,5167,293
昭和28年4月2日〜29年4月1日68,0685,672
昭和30年4月2日〜31年4月1日55,1844,598
昭和33年4月2日〜34年4月1日35,8392,986
昭和35年4月2日〜36年4月1日22,6731,889
昭和36年4月2日〜41年4月1日16,3351,361
昭和41年4月2日以降00

昭和35年生まれ(昭和35年4月2日〜36年4月1日)は、年額22,673円です。昭和40年生まれは、昭和36年から41年までの区分にあたり、年額16,335円です。

比べてみたい数字があります。令和8年度の老齢基礎年金の満額は、昭和31年4月2日以後生まれで月額70,608円です。月額1,361円は、その約2%にすぎません。

「同じように保険料を納めたのに」という感覚は、この額の小ささを知ると、重さが変わります。差は確かにあります。ただし、生活を左右する規模ではない世代が多いのです。

加給年金と振替加算の金額の違い

加給年金と振替加算は、似た名前でも性格は別物です。

項目加給年金振替加算
誰に付くか夫の老齢厚生年金など妻自身の老齢基礎年金
期間妻が65歳になるまで妻が65歳になって以降
令和8年度の額243,800円+特別加算(最大で合計423,700円)最高243,100円。昭和36〜41年生まれは16,335円

加給年金は大きくても、期間が限られます。振替加算は小さくても、妻の老齢基礎年金に付きます。

夫の年金に付く大きな加算が、妻の小さな加算に置き換わる。そう考えると、全体像をつかめます。

共働きと片働きの年金額のモデル比較

差を数字で並べてみます。前提は次のとおりです。

夫は昭和18年4月2日以後生まれで、65歳。妻は5歳年下の60歳で、昭和36年4月2日〜41年4月1日生まれとします。

共働きの妻は、厚生年金に25年(300月)加入し、平均標準報酬額が30万円だったと仮定します。報酬比例部分の式は、次のとおりです。

30万円 × 5.481/1000 × 300月 = 約49万円(年額)

5.481/1000は、平成15年4月以降の加入期間に使う乗率です。平成15年3月以前の期間は別の乗率が適用され、再評価率や毎年の改定率も反映されません。実際の額とはずれる概算です。

項目共働き(妻・厚生年金25年)片働き(妻・厚生年金なし)
妻の老齢厚生年金(年額・概算)約49万円なし
振替加算(年額)対象外16,335円
夫の加給年金(妻が65歳になるまで)付かない可能性が高い付く(最大で年423,700円)

65歳から85歳までの20年で見ます。片働きの妻が受ける振替加算は、16,335円 × 20年 = 約33万円。共働きの妻の老齢厚生年金は、約49万円 × 20年 = 約986万円です。

片働き世帯には、妻が65歳になるまでの加給年金があります。5年分で、423,700円 × 5年 = 約212万円です。この分を足しても、差は埋まりません。

もちろん、報酬や加入期間の前提を変えれば、結果は動きます。ここで示したのは、あくまでモデルです。それでも、自分の厚生年金を積んだ人ほど、受け取る年金の柱が太くなる構図は変わりません。

なお、第3号被保険者は、自分で保険料を納めなくても基礎年金を受けられます。保険料は、会社員や公務員など第2号被保険者全体で負担する仕組みです。振替加算とは別の制度です。

振替加算に関するよくある質問

振替加算で迷いやすいのは、年上の妻、いつまで、手続き、確認方法、繰下げの5点。

質問は、次の5つです。

  1. 妻が年上の場合も振替加算を受け取れる?
  2. 振替加算はいつまで受け取れる?廃止される予定はある?
  3. 振替加算の手続きは必要?申請を忘れたらどうなる?
  4. 振替加算を受け取っているか確認する方法は?
  5. 年金を繰下げ受給した場合も振替加算はもらえる?

最初は、妻が年上の場合です。

妻が年上の場合も振替加算を受け取れる?

受け取れる場合があります。妻が65歳より後に老齢基礎年金の受給権を得たときは、夫の加給年金の対象でなくても、一定の要件を満たせば振替加算が加算されます。

妻が65歳になった後に、夫が厚生年金などの加入期間240月以上の老齢年金、または1・2級の障害年金を受けられるようになった場合が、その一例です。このときは「老齢基礎年金額加算開始事由該当届」を、年金事務所へ提出します。

必要書類は3種類です。戸籍謄本(抄本)、世帯全員の住民票の写し、所得証明書または非課税証明書が要ります。マイナンバーを届出書に記載すれば、添付を省略できる場合があります。

振替加算はいつまで受け取れる?廃止される予定はある?

振替加算の加算先は、妻自身の老齢基礎年金の額です。日本年金機構の案内に、期限を定めた記載は見当たりません。個別の支給停止の条件は、年金事務所で確認しておくと安心です。

新たに対象になる人は、昭和41年4月1日生まれの人が65歳になる2031年を最後に、出なくなります。経過措置であり、対象世代が尽きれば自然に終わる制度です。

では、廃止の動きはあるのか。2025年に成立した年金制度改正法で見直されたのは、夫側の配偶者加給年金です。

2028年4月以降に受給権が生じる人から、額が約1割下がります。すでに加算を受けている人は、従前の額が続きます。振替加算を廃止するという内容は、現時点で公表されている改正内容からは確認できませんでした。

振替加算の手続きは必要?申請を忘れたらどうなる?

多くの人は、手続きがいりません。年金を請求するときの裁定請求書に、配偶者の基礎年金番号、氏名、生年月日を正確に書くと、振替加算の判定に反映されます。

届出が必要になるのは、妻が65歳になった後に、夫が240月以上の老齢年金などを受けられるようになった場合です。夫が退職して年金額が改定され、240月以上になるケースも含まれます。

届出が必要なケースで出さなければ、加算は始まりません。思い当たる事情があるなら、早めに年金事務所へ相談したいところです。

振替加算を受け取っているか確認する方法は?

手がかりは、手元の「年金決定通知書」です。「決定・変更理由」の欄を見てください。

配偶者が一定の加入期間を有する老齢(退職)年金または障害年金を受けられるようになったため、老齢基礎年金に振替加算額を加算した。この趣旨の文言があれば、加算されています。

通知書が見当たらないときは、ねんきんネットで年金額改定通知書や年金振込通知書の内容を確認できます。利用には登録が必要です。それでも分からなければ、年金事務所かねんきんダイヤルに問い合わせます。

年金を繰下げ受給した場合も振替加算はもらえる?

繰下げの待機期間中は、受け取れません。繰下げ待機期間とは、年金を受け取っていない期間のことで、この間は加給年金も振替加算も止まります。

さらに、加給年金額や振替加算額は、繰下げによる増額の対象にもなりません。繰下げ加算額は、老齢基礎年金の額から振替加算額を除いて計算されます。夫が繰下げを考えている場合は、加給年金が付かなくなる点が判断材料です。

まとめ|対象かどうかは生年月日と厚生年金の加入期間で決まる。ねんきんネットで自分の受給額を確かめる

振替加算は、旧制度で年金額が低くなった世代を補う、期間限定の加算です。専業主婦への優遇というより、世代の事情に合わせた経過措置と見るほうが実態に近い。

対象かどうかは、生年月日と、自分と配偶者の厚生年金の加入期間で決まります。昭和36年から41年生まれの額は、年額16,335円。厚生年金を積んできた人は、自分の老齢厚生年金のほうが大きくなります。

次の一歩は、自分の加入期間と見込額の確認です。ねんきん定期便やねんきんネットで調べ、疑問が残れば年金事務所の窓口で聞きます。対象外でも、自分の年金額が分かれば、老後の計画は立て直せます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種資格保有。金融・保険・年金・税金・不動産分野を中心に、これまで1,000本以上の記事を執筆。金融記事の監修や編集にも携わり、公的機関の資料や一次情報をもとに、専門的な制度や仕組みをわかりやすく解説しています。

目次