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年金の繰り上げ受給額の計算方法|減額率早見表と損益分岐点をシミュレーション

年金 繰り上げ受給 計算

「60歳から年金をもらうと、月いくら減るのだろう?」
「何歳まで生きれば、65歳から受け取る場合と総額が逆転するのか?」

このような疑問をお持ちではありませんか。

繰り上げ受給の減額率は、月0.4%に繰り上げた月数を掛けて求めます。60歳で請求すれば、減額率は24%です。65歳から受け取る場合と累計が並ぶのは、60歳請求なら80歳10か月です(2026年10月時点)。

そこで本記事では、以下の内容を自分の数字で計算できるように詳しく解説します。

  • 見込額と減額率から月額・年額を求める計算式
  • 60〜64歳の年齢別の年金額(計算表つき)
  • 65歳受給との損益分岐年齢と、その前後の累計差
  • 計算するときに額面のまま使えない注意点

ご自身の見込額に置き換えながら、ぜひ参考にしてみてください。

目次

年金の繰り上げ受給額の計算方法【計算式・減額率】

計算は、4段階で進みます。見込額を確認し、減額率を求め、月額と年額を出し、最後に公式ツールで検算します。

手順は、次のとおりです。

  1. ねんきん定期便・ねんきんネットで年金見込額を確認する
  2. 生年月日と繰り上げ月数から減額率を計算する
  3. 減額率を使って年金の月額・年額を計算する
  4. ねんきんネットで繰り上げ受給額をシミュレーションする

見込額の確認から順に進めます。

ねんきん定期便・ねんきんネットで年金見込額を確認する

最初の入力値は、ねんきん定期便に載っている年金の見込額です。50歳以上60歳未満の定期便には、65歳から受け取れる見込額が載っています。

現在の年金制度に60歳まで同じ条件で加入し続けた、という仮定の数字です(日本年金機構、令和6年度版の見方)。60歳以降に働いた分の増額は、含まれていません。確認の手順は3つです。

  • 老齢基礎年金と老齢厚生年金の見込額を、それぞれ探す
  • 2つを足して、合計の見込額を出す
  • 年額を12で割って、月額にする

見込額は「年額」で載っています。月額と取り違えると、以降の計算がすべて12倍ずれます。

60歳以上65歳未満の人の定期便は、作成時点の加入実績に応じて、65歳から受け取れる見込額が載ります。本記事では、どちらも65歳から受け取る額とみなして進めましょう。

定期便が手元に見当たらなければ、ねんきんネットでも見込額は見られます。使い方は、この章の最後で触れます。ここで出した数字が、以降のすべての計算の土台です。

生年月日と繰り上げ月数から減額率を計算する

減額率は、繰り上げた月数に0.4%を掛けて求めます。式にすると、「減額率=0.4%×繰り上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数」です(日本年金機構、2024年8月19日更新)。

昭和37年4月2日以降の生まれは月0.4%、昭和37年4月1日以前の生まれは月0.5%で計算します。2026年に58歳の人は、前者に当たります。60歳で請求すれば60か月分で24%、64歳なら12か月分で4.8%です。

月数は、年齢だけでなく請求する月でも変わります。63歳6か月で請求すると、65歳まで18か月なので、減額率は7.2%です。請求年齢ごとの率は、次の早見表のとおりです。

請求時の年齢昭和37年4月2日以降生まれ(月0.4%)昭和37年4月1日以前生まれ(月0.5%)
60歳24.0%30.0%
61歳19.2%24.0%
62歳14.4%18.0%
63歳9.6%12.0%
64歳4.8%6.0%

年金は、請求した日の翌月分から支給されます。減額率は請求した時点で決まり、その後は変わりません。

そして、一度請求すると取り消せません。減額は一生続き、国民年金の任意加入や保険料の追納もできなくなります。ここだけは、計算より先に頭に入れておきたいところです。

減額率を使って年金の月額・年額を計算する

減額率が出たら、65歳から受け取る見込額に「1−減額率」を掛けます。式は、「繰り上げ後の月額=65歳時点の月額×(1−0.004×繰り上げ月数)」です。

仮に、65歳時点の見込額が月15万円(年180万円)だとします。60歳から請求すると、減額率は24%です。

15万円×0.76で、月額は11.4万円、年額は136.8万円です。65歳から受け取る場合より、月3.6万円、年43.2万円少ない金額が出ます。

老齢基礎年金だけを見るなら、令和8年度の満額は月70,608円です(昭和31年4月2日以後生まれ、日本年金機構)。60歳請求なら、70,608円×0.76で約53,700円です。老齢基礎年金と老齢厚生年金は原則として同時に繰り上げるため、減額は両方にかかります。

この結果は額面にすぎません。税金や社会保険料を引く前の金額なので、手取りはさらに少なくなります。端数の処理で、実際の支給額と多少ずれる場合もあります。

月15万円は、説明用の仮の数字です。ご自身の見込額に置き換えて、同じ手順で計算してみてください。

ねんきんネットで繰り上げ受給額をシミュレーションする

手計算が合っているかは、ねんきんネットの「将来の年金額を試算する」で確かめられます。国民年金か厚生年金に加入中、または加入していた75歳未満の人が対象です(日本年金機構、2025年1月7日更新)。試算の方法は2つあります。

  • かんたん試算:現在と同じ条件で60歳まで加入する前提で、見込額を出す
  • 詳細な条件で試算:今後の収入見込みや働く期間、受給開始年齢を自分で設定する

繰り上げの検算に向くのは、後者の詳細な試算です。条件を変えた試算を最大5件まで保存でき、結果をグラフや表で並べて比べられます。

継続雇用で給与が下がる人は、60歳以降の収入見込みも入力しておきましょう。定期便にない加入分を含めた試算ができます。

手計算とネットの試算で金額が大きく違ったら、まず見込額の月額と年額の取り違えを疑ってください。試算はあくまで見込みで、実際の受給額と一致するとは限りません。

年金の繰り上げ受給額を年齢別にシミュレーション【計算表】

年齢別の月額と年額を、先に一覧で見てみましょう。65歳時点の見込額を月15万円(仮)、減額率を月0.4%として計算しました。

請求年齢減額率月額年額65歳受給との年額差
60歳24.0%11.4万円136.8万円−43.2万円
61歳19.2%12.12万円145.44万円−34.56万円
62歳14.4%12.84万円154.08万円−25.92万円
63歳9.6%13.56万円162.72万円−17.28万円
64歳4.8%14.28万円171.36万円−8.64万円

表の金額は、見込額に比例します。ご自身の見込額が月20万円なら、各行の金額を20÷15倍にすれば、おおよその数字が出ます。減額率と年齢の対応は、見込額によって変わりません。

請求年齢は、次の5つです。

  1. 60歳から繰り上げ受給した場合の年金額
  2. 61歳から繰り上げ受給した場合の年金額
  3. 62歳から繰り上げ受給した場合の年金額
  4. 63歳から繰り上げ受給した場合の年金額
  5. 64歳から繰り上げ受給した場合の年金額

60歳から順に、1歳ずつ見ていきます。

60歳から繰り上げ受給した場合の年金額

60歳で請求すると、減額率は24%です。5つの年齢のなかで、減り幅が最大です。月額は11.4万円、年額は136.8万円で、65歳受給より月3.6万円、年43.2万円少なくなります。

その代わり、受け取りは5年早まります。60歳から65歳までの60か月で、合計684万円を受け取る計算です。

60歳は、継続雇用で給与が下がる時期と重なります。給与と年金の合計が月65万円を超えなければ、在職老齢年金による支給停止は起きません(令和8年度)。

ただし、高年齢雇用継続給付を受けると年金の一部が止まる場合があります。詳しくは、後の注意点で触れます。

61歳から繰り上げ受給した場合の年金額

61歳請求の減額率は19.2%です。月額は12.12万円、年額は145.44万円で、65歳受給との差は月2.88万円、年34.56万円です。61歳から65歳までの48か月で、合計約581.8万円を受け取れます。

60歳請求と比べると、月額は7,200円高くなります。1年待つだけで、減額は4.8ポイント小さくなります。

62歳から繰り上げ受給した場合の年金額

62歳請求の減額率は14.4%です。月額は12.84万円、年額は154.08万円で、65歳受給との差は月2.16万円、年25.92万円です。62歳から65歳までの36か月で、合計約462.2万円を受け取ります。

60歳請求と比べると、月額は1.44万円多くなります。60歳と64歳の中間にあたり、減額と早さの釣り合いを探す人が当てはめやすい年齢です。

63歳から繰り上げ受給した場合の年金額

63歳請求の減額率は9.6%。月額は13.56万円、年額は162.72万円で、65歳受給との差は月1.44万円、年17.28万円です。63歳から65歳までの24か月で、合計約325.4万円を受け取れます。

減額は小さくなります。63歳が、減額率が10%を切る最初の年齢です。一方で、早く受け取れる期間も2年に縮みます。

64歳から繰り上げ受給した場合の年金額

64歳請求の減額率は4.8%です。月額は14.28万円、年額は171.36万円で、65歳受給との差は月7,200円、年8.64万円にとどまります。

早く受け取れるのは、1年だけです。その1年間に171.36万円を受け取ります。引き換えに、65歳以降は一生、月7,200円ずつ少なくなります。

減額を最小限にとどめて、収入の空白を1年だけ埋めたい人が当てはめる年齢です。この差は、次の章の損益分岐年齢と合わせて見ておきましょう。

年金の繰り上げ受給と65歳受給の損益分岐点を計算

損益分岐年齢とは、繰り上げ受給と65歳受給の累計受給額が並ぶ年齢をいいます。以降の数字は額面ベースの概算で、税金や社会保険料を引く前の金額です。65歳まで厚生年金に加入する場合の、見込額の増え方も含めていません。

なお、65歳が基準で、受け取り始める時期は繰り上げ・繰り下げの両側に動かせます。ここでは繰り上げ側だけを比べます。

月0.4%の場合、請求年齢ごとの損益分岐年齢は次のとおりです。見込額の大きさに関係なく、年齢は変わりません。

請求年齢損益分岐年齢
60歳80歳10か月
61歳81歳10か月
62歳82歳10か月
63歳83歳10か月
64歳84歳10か月

比べる年齢は、次の3つです。

  1. 60歳受給と65歳受給の損益分岐年齢
  2. 62歳受給と65歳受給の損益分岐年齢
  3. 64歳受給と65歳受給の損益分岐年齢

60歳から順に、累計が並ぶ年齢を確認します。

60歳受給と65歳受給の損益分岐年齢

60歳請求と65歳受給の累計は、80歳10か月で並びます。月0.4%の減額なら、繰り上げ請求から250か月(20年10か月)で並ぶ計算です。60歳の250か月後が、80歳10か月です。

この関係から、損益分岐年齢は「85歳10か月−繰り上げた年数」で求められます。見込額が月15万円(仮)のときの累計差を、65歳受給を基準に並べます。

年齢60歳請求の累計−65歳受給の累計
75歳+252万円
80歳+36万円
85歳−180万円
90歳−396万円
95歳−612万円

75歳の時点では、60歳請求が15年分、65歳受給が10年分を受け取った状態です。受け取った年数が多い分、減額されても累計は前者が上回ります。

80歳までに受け取りを終える場合も、累計では60歳請求のほうが多くなります。85歳を過ぎると逆転し、年43.2万円ずつ差が開きます。

この表は、早く亡くなれば得、長生きすれば損という予想ではありません。何歳まで受け取り続けるか、その結果の比較です。親族の寿命は気になる材料ですが、短い側と長い側の両方の数字を並べて見ておきましょう。

62歳受給と65歳受給の損益分岐年齢

62歳請求と65歳受給の累計は、82歳10か月で並びます。85歳10か月から3年を引いた年齢です。累計差は、80歳で+73万円、85歳で−56万円、90歳で−186万円、95歳で−315万円です。

60歳請求より、分岐年齢は2年遅くなります。一方で、年額の差は25.92万円で、60歳請求の約6割です。分岐が遅いほど不利に見えますが、毎年の差が小さい点も並べて見たいところです。

64歳受給と65歳受給の損益分岐年齢

64歳請求と65歳受給の累計は、84歳10か月で並びます。累計差は、80歳で+42万円、85歳で−1万円、90歳で−45万円、95歳で−88万円です。

差が小さいのは、早く受け取れるのが1年だけだからです。年額の差は8.64万円にとどまります。

損益分岐年齢に出てこない影響も、ここで押さえておきましょう。繰り上げを請求すると、事後重症などによる障害年金は請求できなくなります。

65歳までは、遺族厚生年金などと老齢年金を同時に受け取れず、どちらかを選ぶ形です。寡婦年金も支給されなくなります(日本年金機構、2024年8月19日更新)。

自分が先に亡くなった場合の、妻の年金に関わる点です。家族がいる人は、請求の前に年金事務所で確認しておきたいところです。

年金の繰り上げ受給額を計算するときの注意点

計算結果には、額面のままでは使えない部分があります。注意点は3つです。

項目は、次のとおりです。

  1. 60歳以降も厚生年金に加入すると年金見込額が変わる
  2. 働きながら受給すると老齢厚生年金が支給停止される場合がある
  3. 税金・社会保険料によって年金の手取り額が変わる

加入期間の影響から順に確認します。

60歳以降も厚生年金に加入すると年金見込額が変わる

継続雇用で厚生年金に加入し続ける人は、定期便の見込額が実態とずれます。定期便の見込額は60歳までの加入を前提にしており、その後の加入分を含まないためです。

加入期間が延びれば、年金の計算に使う期間も延びます。年金額の見直しは2つあります。

1つは退職改定です。厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受けている人が、退職して1か月を過ぎたときに行われます。退職した翌月分の年金から、反映されていなかった加入期間が加わる形です。

もう1つは在職定時改定で、毎年9月1日に在職している人の年金額を10月分から見直します。対象は65歳以上70歳未満に限られ、65歳未満の人には当てはまりません(日本年金機構「老齢年金ガイド」令和8年度版)。

ただし、繰り上げ後に加入した分へ、繰り上げの減額率が掛かるかどうかは、確認した公式資料に書かれていませんでした。働いて保険料を払う以上、年金額への反映は知っておきたいところです。

請求の前に、年金事務所へ自分の加入予定を伝えて確認しましょう。ねんきんネットの詳細な試算に就業見込みを入れて、確かめる方法もあります。

働きながら受給すると老齢厚生年金が支給停止される場合がある

厚生年金に加入して働くと、給与と老齢厚生年金の合計額によっては、年金の一部が止まります。これが在職老齢年金です。令和8年度の基準額は月65万円で、令和8年4月に51万円から引き上げられました(日本年金機構、2026年4月1日更新)。

繰り上げた老齢厚生年金も対象です。老齢基礎年金は対象外で、全額が支給されます。

計算に使う金額は2つ。基本月額と総報酬月額相当額です。基本月額は、加給年金を除いた老齢厚生年金の月額を指します。

総報酬月額相当額は、その月の標準報酬月額に、その月以前1年間の標準賞与額の合計の12分の1を足した額です。この2つを合計して、65万円以下なら全額が出ます。超えた分の半額が、年金から止まります。

機構の例では、月給41万円・年間賞与144万円・年金月15万円で合計は68万円です。超過分3万円の半額、1.5万円が止まります。

給与が下がる人は、合計が65万円に届かない例が増えます。それでも、賞与を含めて確かめておきましょう。

もう一つ見落としやすいのが、高年齢雇用継続給付です。雇用保険の加入期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の人で、賃金が60歳到達時の75%未満に下がった場合に、最高で賃金の10%が支給されます。この給付を受けると、老齢厚生年金の一部が止まります。

停止額は最高で標準報酬月額の4%です(令和7年3月31日以前に60歳に達した人などは、最高6%)。老齢基礎年金は対象外です。

給与が現在の6割ほどに下がる継続雇用は、この条件に当たる可能性があります。請求の前に、給付と年金を合わせた月収を確認したいところです。

繰り上げ後の基本月額が、減額の前か後かは、公式ページに記載がありませんでした。年金事務所で確かめてください。詳しい計算は、「年金 繰り上げ受給 働きながら」の記事で扱っています。

税金・社会保険料によって年金の手取り額が変わる

年金の額面と手取りは違います。老齢年金は雑所得として課税され、収入から公的年金等控除を引いて所得を計算します(国税庁、2026年4月1日現在)。

給与がある人は、確定申告の要否に注意しましょう。公的年金等の収入が400万円以下で、公的年金等に係る雑所得以外の所得が20万円以下なら、申告は不要とされています。

給与所得は、この「雑所得以外の所得」に当たります。継続雇用で給与がある人は、申告が必要になる場合があります。

手取りの具体額は、ここでは示しません。公的年金等控除の額や源泉徴収の基準は、国税庁の最新の表で確かめる必要があります。

額面で出した損益分岐年齢は、手取りにするとずれます。この点を、頭に置いておきましょう。

まとめ|年金の繰り上げ受給は減額率と損益分岐点を計算して判断しよう

繰り上げ受給の計算は、5つの手順で進みます。定期便で見込額を確認し、減額率を求め、月額と年額を出します。65歳受給との累計を比べ、最後に手取りで見直す流れです。

減額率は月0.4%で、60歳請求なら24%。損益分岐年齢は、60歳請求で80歳10か月、64歳請求で84歳10か月が目安です。ただし額面の概算であり、在職老齢年金や税金で手取りは変わります。

請求は取り消せません。決める前に、次の3つを済ませておきましょう。

  1. 定期便で、65歳から受け取る見込額を確認する
  2. ねんきんネットで、受給開始年齢を変えて試算する
  3. 年金事務所で、自分の記録に基づく額を確認する

収入減を補う方法は、繰り上げだけではありません。高年齢雇用継続給付、貯蓄の取り崩し、住宅ローンの返済計画も並べて、必要な月額から逆算して選びましょう。受け取り始める年齢は、数字を自分で出したうえで決めたいところです。

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この記事を書いた人

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種資格保有。金融・保険・年金・税金・不動産分野を中心に、これまで1,000本以上の記事を執筆。金融記事の監修や編集にも携わり、公的機関の資料や一次情報をもとに、専門的な制度や仕組みをわかりやすく解説しています。

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