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退職金の税金はいくら控除される?退職所得控除の計算方法・手取り額・申告手続きを解説

退職金 税金 控除

「退職金から、税金はいくら引かれるのか」「自分の手取りは、いくらになるのか」。退職金の見込み額が見えてくると、こうした疑問が浮かびます。

先に答えを書きます。退職金には「退職所得控除」という大きな控除があり、勤続35年で2,100万円を受け取る場合、税金は約18.9万円、手取りは約2,081万円になる計算です。ただし、手続きを一つ忘れると、同じ2,100万円から約429万円がいったん引かれてしまいます。

本記事では、控除額の早見表と税額・手取りの計算手順、一時金と年金の違い、必要な申告手続き、iDeCoなど複数の退職金を受け取るときの注意点を解説します。まず、自分の勤続年数から控除額を確かめてください。

目次

退職金の税金と退職所得控除の計算方法

税金は、控除額、課税される金額、所得税、住民税の順に計算します。この順番を知っておけば、会社から示された税額が合っているかを自分で確かめられます。勤続35年・退職金2,100万円の例に沿って進めます(2026年10月時点の国税庁の記載に基づきます)。

計算の手順は、次の5つです。

  1. 勤続年数から退職所得控除額を計算する【早見表付き】
  2. 退職所得控除額を差し引いて課税退職所得金額を計算する
  3. 所得税・復興特別所得税を計算する
  4. 住民税を計算する
  5. 税金を差し引いて手取り額を計算する【勤続35年・退職金2,100万円の例】

それぞれ、計算式と勤続35年・2,100万円の例で確認します。

①勤続年数から退職所得控除額を計算する【早見表付き】

最初の手順は、勤続年数から控除額を出すことです。勤続年数は入社から退職までの期間で数え、1年未満の端数は1年に切り上げます。勤続10年2か月なら、11年です。

控除額の式は2本あります。

  • 勤続20年以下:40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
  • 勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数−20年)

勤続35年なら、800万円+70万円×15年で1,850万円です。障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、ここに100万円が加算されます。

勤続年数退職所得控除額
10年400万円
20年800万円
25年1,150万円
30年1,500万円
35年1,850万円
38年2,060万円

引用:国税庁 No.1420を基に計算(2026年10月時点)

勤続年数が1年違うだけで、控除額は40万円(20年以下)または70万円(20年超)動きます。入社日と退職日の数え方は、人事に確かめておくと安心です。

②退職所得控除額を差し引いて課税退職所得金額を計算する

次に、退職金から控除額を引き、残りを2分の1にします。式は次のとおりです。

課税退職所得金額=(退職金の収入金額−退職所得控除額)×1/2

収入金額は、源泉徴収される前の金額で見ます。計算結果の1,000円未満は切り捨てます。

退職金が控除額以下なら、引き算の結果がゼロ以下になり、課税退職所得金額もゼロです。所得税も住民税もかかりません。「控除額より退職金が少ないとき、税金はいくらか」への答えは、0円です。

2,100万円で控除が1,850万円なら、差は250万円。その半分の125万円が課税退職所得金額です。

退職所得は、給与などと分けて税額を計算する分離課税が原則です。勤続5年以下など、2分の1が使えない例外もあります(後述します)。

③所得税・復興特別所得税を計算する

課税退職所得金額が出たら、所得税の速算表に当てはめます。税率は5%から45%の7段階です。

課税退職所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超 330万円以下10%97,500円
330万円超 695万円以下20%427,500円
695万円超 900万円以下23%636,000円
900万円超 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円超 4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

引用:国税庁 No.2260(2026年10月時点、令和8年4月1日現在)

求めた所得税額には、復興特別所得税として2.1%が加わります。所得税額×102.1%が、源泉徴収される所得税等の額で、1円未満は切り捨てます。

課税退職所得金額125万円は195万円以下なので、税率は5%です。62,500円×1.021で、63,812円です。

2027年1月以降は、防衛特別所得税が創設され、復興特別所得税の税率が下がります。内訳は変わりますが、合計税率は変わらず、源泉徴収税額の計算方法も同じです。

④住民税を計算する

住民税は、課税退職所得金額に10%を掛けて求めます。内訳は市町村民税(東京23区は特別区民税)が6%、道府県民税(東京都は都民税)が4%です。税額は、それぞれ100円未満を切り捨てます。

課税退職所得金額125万円なら、125万円×10%で12万5,000円です。市町村民税が7万5,000円、道府県民税が5万円です。

通常の住民税は、前年の所得に対して翌年に課税されます。退職金は違います。

支払われた年の所得として、その時点で課税されます(現年所得課税)。勤務先が退職金から差し引いて納める特別徴収が原則で、納め先は1月1日現在の住所地の市町村と道府県です。

⑤税金を差し引いて手取り額を計算する【勤続35年・退職金2,100万円の例】

勤続35年・退職金2,100万円の場合で、ここまでの4つの手順を通しで計算します。

項目金額
退職金21,000,000円
退職所得控除額18,500,000円
課税退職所得金額1,250,000円
所得税+復興特別所得税63,812円
住民税125,000円
税額合計188,812円
手取り20,811,188円

引用:国税庁 No.1420・2260・2732、総務省(2026年10月時点)

税金の合計は18万8,812円で、退職金の約0.9%です。手取りは2,081万1,188円です。

退職金の額が違えば、結果も変わります。勤続35年で比べると、次のとおりです。

退職金課税退職所得金額所得税等住民税税額合計手取り
1,800万円0円0円0円0円1,800万円
2,100万円125万円63,812円125,000円188,812円20,811,188円
2,500万円325万円232,277円325,000円557,277円24,442,723円
3,000万円575万円737,672円575,000円1,312,672円28,687,328円

引用:国税庁・総務省を基に計算(2026年10月時点)

表の数字は、申告書を提出して源泉徴収された場合の金額です。提出していないと金額が大きく変わります(後述します)。

退職金の受け取り方による税金・控除の違い

退職金の受け取り方は、一時金、年金、その併用の3つです。税の区分と使える控除が違うため、手取りも変わりえます。選ぶ前に違いを押さえておくと、会社の規程を読むときに迷いません。

一時金年金併用
税の区分退職所得雑所得一時金分は退職所得、年金分は雑所得
使える控除退職所得控除と2分の1の計算公的年金等控除それぞれの控除
他の収入との関係他の所得と分けて計算他の公的年金等と合算一時金分は分離、年金分は合算

引用:国税庁 No.1420・No.1600を基に作成(2026年10月時点)

どれを選ぶかは、3点で決まります。退職金が控除額以内に収まるか。退職後に受け取る他の年金や収入がいくらか。会社の規程で、どの方法が選べるか。規程の確認が先で、そのうえで3パターンの税額を試算して比べてください。

受け取り方は、次の3つです。

  1. 一時金で受け取る場合|退職所得控除が適用される
  2. 年金形式で受け取る場合|公的年金等控除が適用される
  3. 一時金と年金を併用する場合|それぞれの控除が適用される

税の区分と使える控除の違いを、それぞれ確認します。

一時金で受け取る場合|退職所得控除が適用される

退職金を一時金で受け取ると、税法上は退職所得です。確定拠出年金の老齢給付金の一時金も、退職所得に含まれます。

退職所得控除と2分の1の計算が使えるので、控除額の範囲内なら税がかかりません。超えても、超えた部分の半分だけが課税対象です。

「退職所得の受給に関する申告書」を出していれば、勤務先が税額を計算して源泉徴収します。原則として、確定申告は不要です。

退職金が控除額以内に収まる人にとって、一時金は税の面で有利になりやすい受け取り方です。ただし、実際の手取りは会社の規程と他の収入で変わります。

年金形式で受け取る場合|公的年金等控除が適用される

退職金を年金形式で分割して受け取ると、税の区分は雑所得です。過去の勤務により会社から支払われる年金や、確定給付企業年金法に基づく年金は、公的年金等に含まれます。

収入金額から公的年金等控除額を引いて、雑所得の金額を出します。退職所得控除は使えません。

控除額は、年齢(65歳未満か65歳以上か)と、公的年金等の収入の合計額で決まります。国民年金や厚生年金を受け取り始めると、合算されて課税される金額が増えることがあります。60歳で退職して年金を受け取り始める人は、65歳を境に他の年金が加わる点に注意してください。

一時金と年金を併用する場合|それぞれの控除が適用される

一時金と年金を併用すると、一時金部分は退職所得、年金部分は雑所得として別々に課税されます。それぞれに、退職所得控除と公的年金等控除が使えます。

考え方の基本は、一時金の額を退職所得控除の範囲に収め、超える部分を年金にすることです。控除内の一時金には税がかかりません。

勤続35年で2,100万円なら、控除1,850万円を超える250万円の扱いが論点です。ただし、併用や分割が選べるかどうかは、会社の退職金制度によります。選択肢がない会社もあるため、まず人事・総務に確認してください。

退職金の税金控除に必要な申告手続き

控除を受けるための手続きは、受給前、受給時、受給後の3段階。手取りに最も差がつくのは、受給前に出す1通の書類です。

手続きは、次の3つです。

  1. 受給前|「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出する
  2. 受給時|退職所得の源泉徴収票で控除額・税額を確認する
  3. 受給後|必要に応じて確定申告で税金を精算する

受け取る前から受け取った後まで、時系列に沿って確認します。

受給前|「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出する

「退職所得の受給に関する申告書」は、退職金の支払を受けるときまでに、勤務先へ出す書類です。提出先は勤務先で、税務署ではありません。

出していれば、勤務先が退職所得控除と2分の1を反映して源泉徴収します。原則として、確定申告は不要です。

出していないと、支払額に一律20.42%が源泉徴収されます。2,100万円なら、428万8,200円です。

正しい所得税等は63,812円なので、約422万円が多く引かれる計算です。差額は確定申告で精算できますが、戻るまで手元には入りません。

控除内に収まる人ほど、この書類の効果は大きくなります。出したかどうか分からないときは、人事に確認してください。

確定申告が必要になるのは、申告書を出していない場合と、医療費控除や寄附金控除などで確定申告をする場合です。後者は、退職所得も合わせて記載します。

受給時|退職所得の源泉徴収票で控除額・税額を確認する

退職金を受け取ると、勤務先から「退職所得の源泉徴収票」が交付されます。確認する項目は3つで、支払金額、源泉徴収税額、勤続年数です。

2,100万円・勤続35年なら、所得税等は63,812円と計算できます。源泉徴収票の税額とこの数字が合うかを照らし合わせてください。

控除内に収まるはずなのに税額が引かれていれば、申告書が反映されていない可能性があります。勤務先に確認するか、確定申告で精算します。

勤続年数も、見ておきたい項目です。自分の認識と1年ずれていると、控除額が40万円または70万円変わります。源泉徴収票は、確定申告で使うことがあるため、保管しておいてください。

受給後|必要に応じて確定申告で税金を精算する

申告書を出さずに20.42%が源泉徴収された場合は、確定申告で精算します。退職所得の税額を計算し直し、源泉徴収された額のほうが多ければ、差額は還付の対象です。

還付を受けるための申告は、対象の年の翌年1月1日から5年間、提出できます。2027年に受け取った退職金なら、2028年1月1日から2032年12月31日までです。申告のときは、退職所得の源泉徴収票を手元に用意します。

還付までの間、資金は手元に戻りません。最初から申告書を出しておけば、この手間は不要です。

退職金の税金・控除額の計算で注意したいケース

ここまでは、会社の退職金を1回受け取る標準的な計算でした。受け取る件数や時期が変わると、控除額の計算が変わります。iDeCoなどに加入している人は、受取時期の組み立てで税額が動きます。

注意したいケースは、次の3つです。

  1. iDeCo・企業型DCの一時金と退職金を別々の年に受け取る場合【2026年改正】
  2. 同じ年に複数の退職金を受け取る場合
  3. 勤続5年以下で退職金を受け取る場合

それぞれ、控除額の計算がどう変わるかを確認します。

iDeCo・企業型DCの一時金と退職金を別々の年に受け取る場合【2026年改正】

iDeCoや企業型DC(確定拠出年金)の老齢給付金を一時金で受け取ると、退職所得として扱われます。会社の退職金と受け取る年が近いと、勤続期間が重なる分の控除が調整されます。調整の対象になる期間は、受け取る順番で決まります。

  • 前年以前4年内に退職手当等を受けていた場合:従来から調整の対象
  • 前年以前9年内に確定拠出年金の一時金を受けていた場合:令和8年(2026年)1月1日以後に受けた一時金が対象
  • 前年以前19年内に退職手当等を受け、本年に確定拠出年金の一時金を受ける場合:調整の対象

確定拠出年金の一時金は、2026年から前年以前9年内まで広がりました。この見直しは、「10年ルール」と呼ばれることがあります。

iDeCoに加入しているなら、受取時期は退職金の受取年と合わせて試算してください。受け取る順番と間隔で、使える控除が変わります。

同じ年に複数の退職金を受け取る場合

同じ年に2か所以上から退職金を受け取るときは、先に受け取った分も含めて税額を計算します。後から支払う会社は、先に支払われた分の源泉徴収票をもとに源泉徴収税額を出します。受給者は、後から受け取る側の申告書に、支払済みの退職手当等の内容を書き、源泉徴収票を添付する形です。

計算は、収入金額を合計し、勤続年数は最も長い期間に重ならない期間を足して数えます。退職所得控除は、重なる期間の分を差し引きます。

中退共の退職金は、一時金で受け取れば退職手当等とみなされる扱いです。会社の退職金と同じ年に受け取る場合は、この考え方で通算されます。中退共の分割払いは雑所得です。

勤続5年以下で退職金を受け取る場合

勤続5年以下の場合は、2分の1の計算に制限がかかることがあります。

役員等以外の人が受け取る退職金は、控除後の額のうち300万円を超える部分に、2分の1が使えません(2022年1月1日以後)。役員等として勤めた期間が5年以下の人は、退職金全体で2分の1が使えません。

勤続5年を超える一般の従業員の退職金は、この制限の対象外です。勤続35年の人には関係しません。

制限があっても、退職所得控除そのものは使えます。控除額以内なら、税はかかりません。

まとめ|退職所得控除の仕組みを理解して退職金の税負担を正しく把握しよう

退職金の税金は、勤続年数から控除額を出し、(退職金−控除額)×1/2に税率を当てはめて計算します。勤続35年・2,100万円なら、税金は18万8,812円、手取りは2,081万1,188円です。

受け取り方は、一時金・年金・併用で税の区分が変わります。会社の規程で選べる範囲を確かめ、3パターンの税額を試算してから決めてください。

手続きは、受給前の申告書が分かれ目です。提出しないと、2,100万円で約429万円が源泉徴収されます。人事に、書類の有無を早めに確認しておきましょう。

iDeCoや中退共など、複数の退職金を受け取る場合は、受取時期の組み立てで控除が変わります。個別の税額は、税務署や税理士に確認してください。

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この記事を書いた人

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種資格保有。金融・保険・年金・税金・不動産分野を中心に、これまで1,000本以上の記事を執筆。金融記事の監修や編集にも携わり、公的機関の資料や一次情報をもとに、専門的な制度や仕組みをわかりやすく解説しています。

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