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退職金で住宅ローンを一括返済すべき?メリット・デメリットや老後資金を踏まえた判断基準を解説

住宅ローン 退職金 一括返済

「退職金が入ったら、住宅ローンを一括で返したほうがいいのかな?」
「完済したあとに老後資金が足りなくなりそうで不安…」

このような疑問をお持ちではありませんか。

退職金で一括返済すると、毎月の返済と残りの利息がなくなり、団体信用生命保険(団信)の保障も終わります。代わりに、手元の資金はその分だけ減ります。

仮に定年(60歳)時点の残高が約866万円なら、退職金2,000万円の手元資金は約1,134万円です。一方で、減らせる利息は60歳以降の分で約11万〜34万円(金利0.5〜1.5%)にとどまります。

では、すべきかどうか。全額を急ぐ理由は、利息ではなく安心感です。

完済後に預貯金を含む金融資産が目安を超えて残るなら、完済を選んでも構いません。足りないなら、一部だけ返すか、返済を続けて65歳ごろに見直す手があります。そこで本記事では、以下の内容について詳しく解説します。

  • 一括返済で起きることと、利点・弱点
  • 3つのパターンの試算
  • 完済か継続かを分ける判断ポイント
  • 手続きの流れとよくある質問

ぜひ参考にしてみてください。

目次

退職金で住宅ローンを一括返済するメリット・デメリット

一括返済は、利息と月々の返済を消す代わりに、手元資金と団信の保障を手放す選択です。実際に何が変わるのか、6つに分けて整理します。

6つの内訳は、次のとおりです。

  1. 将来支払う予定だった利息を減らせる
  2. 毎月の返済負担がなくなり精神的な安心感を得られる
  3. 手元の資金が減り老後の生活費が不足するおそれがある
  4. 低金利のローンを手放し運用や備えに回せる資金が減る
  5. 団体信用生命保険の保障が終了する
  6. 住宅ローン控除を受けられなくなる場合がある

利息の減り方から確認します。

将来支払う予定だった利息を減らせる

繰上返済をすると、返した元金に対応する利息が不要になり、総返済額が減ります。ただし、定年のころは残りの返済期間が短く、減る額は小さい点に注意が必要です。仮に、現在の残高が1,200万円で返済があと7年(元利均等・固定金利)なら、60歳時点の残高は約866万円(金利1.0%)です。

この残高を一括で返しても、60歳以降に払う予定だった利息は、金利0.5%で約11万円、1.0%で約22万円、1.5%で約34万円にとどまります。思ったより小さな額です。全額繰上返済の手数料は、無料から数万円まで機関で差があります(2025年時点の例では、フラット35は無料、大手銀行の窓口は3.3万円)。減る利息から差し引いて考えておきましょう。

一方、変動金利のローンは、日銀が2026年9月に利上げしたいま、完済すれば金利上昇の影響そのものが消えます。減るのは利息の額より、返済額が膨らむ不安のほうです。

毎月の返済負担がなくなり精神的な安心感を得られる

完済すると、毎月の返済という固定支出がなくなります。仮の条件なら、月の返済額は約14.5万〜15.1万円(金利0.5〜1.5%)です。再雇用で給与が下がる時期に、この支出が消える意味は小さくありません。

しかも、昭和36年4月2日以降生まれの男性は特別支給の老齢厚生年金がなく、年金は65歳から始まります。60〜65歳は、給与が生活の中心です。

高年齢雇用継続給付も、2025年4月以降に60歳になる人は上限が賃金の10%です。給与が60歳時の6割に下がっても、給付を足して約66%にとどまります。老後の最低日常生活費は、夫婦で月23.9万円が平均です(生命保険文化センター、2025年度)。

返済がなくなれば、この水準の生活費と年金の差に向き合いやすくなります。ただし、安心感は主観であり、金額で測れるものではありません。

手元の資金が減り老後の生活費が不足するおそれがある

一括返済では、手元の現金がそのまま減ります。仮に退職金2,000万円で定年時の残高約866万円を返すと、手元に残るのは約1,134万円です。約866万円が、一度に出ていきます。

しかも、完済後に資金が必要になっても、借り直しにくい点に注意が必要です。住宅ローンの商品には、借入時の年齢の上限や、勤続年数・前年年収の条件が付くものがあります。再雇用後の勤続や収入をどう扱うかは機関ごとに違うため、借入先に確認しておきましょう。

一方、60〜65歳は年金がなく、介護には一時的な費用が平均47.2万円、月額が平均9.0万円かかります(生命保険文化センター、2024年度)。いくら残すかの目安は、判断ポイントの章で扱います。

低金利のローンを手放し運用や備えに回せる資金が減る

完済しない選択では、低い金利のローンを残したまま、手元資金を別の用途に回せます。物価は2026年9月に前年同月比で2.1%上昇しており(総務省)、現金は目減りしやすい状況です。投資の面では、新NISAが年360万円(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円)、生涯1,800万円まで非課税で使えます(金融庁)。

2,000万円規模なら、数年かけて枠を埋める設計です。ただし、運用成果は保証されず、元本割れもあります。目安は単純で、ローン金利が1.0%なら、運用が年1.0%を上回って初めて残す意味が生まれるわけです(税・手数料は除く)。

変動金利は上がる余地があり、固定か変動か、適用金利が何%かで答えは変わります。この見出しでは材料を示すにとどめ、判定の基準は判断ポイントに回します。

団体信用生命保険の保障が終了する

団信は、債務者が死亡や所定の高度障害になったとき、保険金で残高が返済される仕組みです(生命保険文化センター)。住宅ローンに付随する保険のため、完済すれば保障も終わります(三菱UFJ銀行コラム)。整理すると、完済でローンも消えるので団信は不要です。

その分、遺族の生活資金(手元資金)は薄くなります。仮に退職金2,000万円・定年時の残高約866万円で比べてみましょう。

完済しない場合、万一のときは団信でローンが消え、現金約2,000万円が残ります。完済した場合は、負債がなく現金は約1,134万円です(金利・手数料・課税は除く簡易計算)。

三大疾病や就業不能などの特約を付けている場合は、扱いが契約ごとに違うため、契約先に確認が必要です。遺族年金の仕組みは、判断ポイントで扱います。

住宅ローン控除を受けられなくなる場合がある

控除期間がすでに終わっていれば、この項目は関係しません。住宅ローン控除は、年末のローン残高に応じて税額から差し引く制度で、期間は居住開始年で決まります。令和3年までの居住は原則10年、令和4年以降は住宅の区分に応じて13年または10年です(国税庁)。

期間中に完済すると、年末残高がなくなるため、その年以降は控除を受けられません。一部返済でも注意が必要です。最初の返済月から最終返済月までが10年未満になった年以降は、原則として対象外です(国税庁)。

借り換えをしても控除期間は延びません。残りの期間は、居住開始年から数えて確かめられます。完済の時期を年末前にするか年明けにするかで、その年の控除額が変わる可能性もあるため、税務署や税理士に聞いておきましょう。

【シミュレーション】退職金で住宅ローンを返済する3つのパターン

3つのパターンを、定年(60歳)時点の残高をもとに同じ前提で比べます。現在の残高ではなく、2年後に減った残高で置く点に注意が必要です。

前提は、現在の残高1,200万円、残り84回(7年)、元利均等、金利は固定とし、2年後の退職金受取時に繰上返済します。退職金は額面2,000万円で、勤続38年(22歳入社〜60歳)という仮の例を置きました。

金利0.5%1.0%1.5%
月返済額約14.5万円約14.8万円約15.1万円
60歳時点の残高約861万円約866万円約870万円

出典:筆者試算(実際の契約条件とは端数などが異なる)。

勤続年数や申告書の有無で、退職金の手取りは変わります。

ケース手取りの目安
勤続38年・申告書を提出約2,000万円(控除2,060万円で課税なし)
勤続20年・申告書を提出約1,861万円(2026年時点の税率での概算)
申告書を出さない場合受取時は約1,592万円(約408万円を源泉徴収、確定申告で精算)

出典:国税庁(2026年4月1日現在法令等)をもとに筆者試算。

試算するパターンは、次の3つです。

  1. 退職金で住宅ローンを全額一括返済する場合
  2. 退職金の一部で500万円を繰り上げ返済する場合
  3. 退職金を使わず住宅ローンの返済を続ける場合

全額一括返済から確認します。

退職金で住宅ローンを全額一括返済する場合

60歳時点の残高を退職金で一括返済すると、月約14.5万〜15.1万円の返済がなくなります。

金利0.5%1.0%1.5%
一括返済額約861.4万円約865.7万円約869.9万円
完済後の手元資金約1,138.6万円約1,134.3万円約1,130.1万円
減る利息約11.0万円約22.2万円約33.6万円

減る利息は残り60回分で、約11万〜34万円です。手元資金が約1,134万円(金利1.0%)に減ると、再雇用後の月の不足を取り崩す年数も縮みます。月5万円の不足なら約18.9年、月10万円なら約9.5年もつ計算です(ローン返済は別)。

手取りが前提より少なければ、手元はさらに減ります。勤続20年(手取り約1,861万円)なら約995万円、申告書を出さず源泉徴収された直後(約1,592万円)なら約726万円です(概算)。ただし、手数料や経過利息は別にかかるため、実際の返済額は借入先の予定表で確かめましょう。

退職金の一部で500万円を繰り上げ返済する場合

60歳時に500万円を返すと、残高は約361万〜370万円に減り、手元資金は約1,500万円残ります。方式は、返済額を変えず期間を縮める期間短縮型と、期間を変えず毎月の返済額を下げる返済額軽減型の2つです。

項目期間短縮型返済額軽減型
月返済額約14.5万〜15.1万円のまま約6.1万〜6.4万円
返済期間約25か月5年のまま
減る利息約9万〜28万円約6万〜19万円

金利1.0%で比べると、利息は短縮型が約18.2万円、軽減型が約12.8万円減り、差は約5万円です。一方、軽減型は月の負担を6万円台まで抑えられます。

三菱UFJ銀行のページには、短縮後に期間を延ばせない点や、控除の適用に影響しうる点の記載があります。残額の借り換えも選べますが、フラット35の借換融資は申込時に満70歳未満などの条件があり、審査と諸費用も必要です。

退職金を使わず住宅ローンの返済を続ける場合

退職金を使わずに返済を続けると、手元には退職金2,000万円がそのまま残ります。全額返済の約1,134万円、500万円返済の約1,500万円と並べると、差は歴然です。

項目0.5%1.0%1.5%
60歳以降に払う残利息約11.0万円約22.2万円約33.6万円
65歳時の手元資金(全額を手元から返した場合の下限)約1,128万円約1,112万円約1,097万円

ここに見落としやすい点があります。ローンを現金で払い切る前提なら、最終的な手元資金は3パターンでほぼ同じで、差は残利息分だけです。実際の差が生まれるのは、月々の返済を給与で賄えるかと、現金で持つ安心感をどう見るかです。

残した資金を運用に回すなら、金利1.0%のローンに対して年1.0%を超える必要があり、元本割れもあります。そこで、60歳は手元資金を厚く保ち、65歳(当初の完済時期)に年金額と家計の実績を見て再判断する2段階の案があります。

退職金で住宅ローンを一括返済すべきか判断するポイント

完済か継続かの分かれ目は、利息の大小よりも、毎月の返済の重さと完済後に残る資金です。次の判定表で、自分の数字がどちら寄りかを確かめておきましょう。

見るポイント完済寄り残す寄り
残りの利息100万円を超える数十万円程度
完済後の金融資産(預貯金込み)目安(約1,800万円強)以上目安を下回る
退職金に対する残債の割合半分以下半分超
毎月の返済と収入返済で毎月が赤字返済しても黒字
金利タイプ変動で、上昇に耐えにくい固定で低金利、または余力が大きい
団信・妻の生活資金夫の死後も妻の資金が足りる見込み夫の死後に妻の資金が不足しそう

出典:ダイヤモンド・オンライン(板倉京氏・税理士、2024年11月)、マネーポストWEB(深野康彦氏、2020年10月)などの意見をもとに筆者が整理。約1,800万円強は筆者の積み上げで、公的な基準ではありません。

「利率1.5%以上で利息が100万円を超えるなら検討」は、税理士の板倉京氏の見解です。「残債が退職金の半分以下なら選択肢」は、ファイナンシャルリサーチ代表の深野康彦氏の見解です。どちらも発表時点の金利環境での目安にとどまります。

暫定の結論を、定年時の残高が約870万円、退職金が手取り2,000万円のケースで出します。残りの利息は約11万〜34万円と小さく、利息100万円超の基準には届きません。つまり、全額を急ぐ理由は利息ではなく安心感です。

退職金だけで見た完済後の手元資金は約1,130万円で、他の預貯金が約670万円以上あれば、目安の約1,800万円強に届きます。届くなら完済も選べます。足りないなら、一部返済にとどめるか、返済を続けて65歳ごろに見直しましょう。

次の一手は、返済予定表と年金見込額の確認です。迷うときはFPに相談しましょう。

判断のポイントは、次の4つです。

  1. 住宅ローンの残高・金利・残りの返済期間
  2. 定年退職後の収入と毎月の生活費
  3. 医療・介護・住宅修繕などに備える老後資金
  4. 妻の老後や万一のときの生活資金

ローンの残高と金利から確認します。

住宅ローンの残高・金利・残りの返済期間

最初の材料は、自分のローンの数字です。確認するのは、残高、現在の適用金利(当初の金利ではない)、金利タイプ、完済予定月、月々の返済額の5つです。固定期間選択型なら、固定期間の終了時期も見ておきましょう。

返済予定表や、借入先から年1回届く残高証明書で分かります。利息の面では、60歳以降の残りが約11万〜34万円で、板倉氏の目安(100万円超)には遠い水準です。現在から払い続ける7年分でも、1,200万円で1.5%なら約65万円、2%なら約87万円にとどまります。

100万円を超えるのは2.3%前後(2.5%で約109万円、3%で約132万円)からです。それでも分かれ目になりやすいのは、金利の高低より、月約15万円の返済が再雇用後の収入を圧迫するかどうかです。

定年退職後の収入と毎月の生活費

65歳までの不足額は、(生活費+ローン返済)−(再雇用の手取り+高年齢雇用継続給付)で見積もります。昭和36年4月2日以降生まれの男性は特別支給の老齢厚生年金がなく、60〜65歳は年金の空白です(日本年金機構)。空白は5年に及びます。

高年齢雇用継続給付は、2025年4月以降に60歳になる人は上限10%で、古い記事の15%は使えません。65歳以降の目安は、総務省「家計調査」2025年平均で見ます。65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月約4.2万円の不足です。

ただし平均値にすぎず、実際の年金額はねんきん定期便やねんきんネットで確かめましょう。参考までに、令和8年度の厚生年金の標準的な夫婦2人分は月23万7,279円です。退職金の取り崩し額は、65歳までと65歳以降に分けて見積もりましょう。

医療・介護・住宅修繕などに備える老後資金

医療・介護・修繕は時期も額も読みにくいため、退職金を使う前に、手元へ残す額を決めておく必要があります。医療費は高額療養費制度で月の自己負担に上限があり、2026年8月から上限額が見直されて年間上限も新設されました。以前の金額で書かれた記事は使えません。

介護は、生命保険文化センターの2024年度調査で、一時的な費用が平均47.2万円、月額が平均9.0万円、期間が平均55.0か月です。掛け合わせると約542万円です。住宅修繕は、2026年11月時点で公的な標準額を確認できていません。

目安を積み上げると、65歳から25年間の月約4.2万円の不足が約1,270万円で、介護と合わせて約1,800万円強です。これは平均値の単純計算で、65歳から90歳までの25年間という筆者の仮定にもとづく数字です。板倉氏の「2,000万円」と近い桁ですが、同氏は根拠を示していないため、一つの目安にとどめます。

妻の老後や万一のときの生活資金

夫が先に亡くなると、妻の生活は遺族年金と自身の老齢基礎年金が中心です。遺族厚生年金は、夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3が原則です。在職中の死亡なら、加入期間が300月に満たなくても300月とみなされます(日本年金機構)。

妻自身の老齢基礎年金は、令和8年度で満額月7万608円です(納付期間が40年に満たなければ減ります)。妻の年齢で扱いが分かれます。夫の死亡時に40歳以上65歳未満で子のない妻には、要件を満たせば中高齢寡婦加算がつきます。

2028年4月に始まる遺族厚生年金の見直しでは、2028年度に40歳以上の女性と、60歳以降に受給権が生じる人は影響を受けません。それより若く子もいなければ、原則5年の有期給付になることがあります(厚生労働省)。

夫の年金は妻に引き継がれず、世帯の年金は減ります。個別の額は年金事務所で確かめましょう。

退職金で住宅ローンを一括返済する手続きの流れ

手続きは、金額と書類の確認、申込と返済、完済後の登記の3段階で進みます。手数料や期限は機関で違うため、以下は個別機関の例として読んでください。

各段階の中身は、次のとおりです。

  1. 金融機関に返済額や手数料・必要書類を確認する
  2. 金融機関に一括返済を申し込み指定日に返済する
  3. 完済後に抵当権抹消登記の手続きをする

返済額と手数料の確認から進めます。

金融機関に返済額や手数料・必要書類を確認する

全額繰上返済は、借入先に事前に申し出て完済日を決める手続きです。手数料は機関で大きく違います。

機関手数料(税込)時点
フラット35無料2026年11月5日確認
三菱UFJ銀行窓口33,000円/ネット16,500円2025年8月1日現在
三井住友銀行SMBCダイレクト無料/窓口33,000円2025年3月10日現在

保証料は、前払い(外枠方式)なら未経過分が戻る例があり、金利に含む方式では戻りません。完済日には、残高に加えて経過利息が要り、機関によっては手数料もかかります。

必要書類は、フラット35の公式ページに一覧が見当たらず、三菱UFJ銀行の窓口はキャッシュカードとお届印を挙げています。金額や書類は商品ごとに違うため、事前に各機関へ確認しておきましょう。

金融機関に一括返済を申し込み指定日に返済する

全額繰上返済は、完済日から逆算して申し込みます。流れは、借入先への事前連絡、申込、前日までの入金、完済日の引き落とし、書類の受取の順に進みます。申込の期限は、フラット35の窓口が完済日の1か月前までです。

「住・My Note」は完済日の2か月前から1か月前の日の前営業日まで、三菱UFJ銀行の窓口は10営業日前です。返済日には、残高と経過利息(機関によっては手数料も)の合計を返済口座に入れておきます。三菱UFJ銀行は、完済日の前日までに用意する案内です。

退職金の支払時期は就業規則で決まり、定めがなければ請求から7日以内とされます(群馬労働局)。入金日が確定してから完済日を決めるのが順当です。入金前に申し込むなら、「住・My Note」は引落しの6営業日前までという取下げ期限も確認しておきましょう。

完済後に抵当権抹消登記の手続きをする

完済しても抵当権は自動では消えず、法務局での抹消登記が別に必要です。金融機関から届く登記識別情報や解除証書などを使い、申請書は自分で作ります。登録免許税は不動産1個につき1,000円で、土地と建物なら2,000円です。

書類が届くまでの目安は、フラット35で完済後1か月程度、三菱UFJ銀行の郵送受取で約10営業日です。司法書士に頼む場合は報酬が別にかかり、金額は事務所ごとに違います。法務省は速やかな申請を勧めていますが、法定の期限は確認できませんでした。

もう一つ、登記簿の住所が現住所と違うと、先に変更登記が必要です。住所変更登記は2026年4月1日から義務化され、変更から2年以内の申請を正当な理由なく怠ると、5万円以下の過料の対象です。

退職金での住宅ローン一括返済に関するよくある質問

迷いやすい3つの疑問に、公的な資料の範囲で答えます。

  1. 退職金で住宅ローンを一括返済すると税金はかかる?
  2. 住宅ローンを少し残して一部だけ返済してもよい?
  3. 一括返済して後悔しやすいのはどんなとき?

税金の疑問から確認します。

退職金で住宅ローンを一括返済すると税金はかかる?

退職金には退職所得として所得税がかかりますが、退職所得控除の範囲内なら原則かかりません。控除額は、勤続20年以下なら40万円×勤続年数、20年超なら800万円に超過1年ごとに70万円を足した額です。課税されるのは、控除後の額の2分の1に限られます。

勤続38年と仮定すると控除は2,060万円で、退職金2,000万円は課税されない計算です。ただし「退職所得の受給に関する申告書」を出さないと、20.42%が源泉徴収されます。2,000万円なら約408万円です。

確定申告で精算できますが、返済の資金計画には響きます。子などが資金を出す場合、住宅ローン返済のための贈与は非課税特例の対象外です。暦年課税の贈与は、年110万円以下なら贈与税がかかりません(国税庁)。

住宅ローンを少し残して一部だけ返済してもよい?

一部だけ返すことはできます。残りは今のローンを続ける形です。フラット35の一部繰上返済は、窓口が100万円以上、「住・My Note」が10万円以上で、手数料は無料です。

三井住友銀行は、SMBCダイレクトなら無料、窓口(書面)は16,500円です(2025年3月10日現在)。方式は期間短縮型と返済額軽減型の2つで、試算は前のシミュレーションに載せました。住宅金融支援機構のサイトでは、返済方法を変えたときの比較シミュレーションが使えます。

注意が必要なのは、返済期間が10年未満になると住宅ローン控除の対象外になる点です。団信は住宅ローンに付随するため、完済すれば終わります。一部返済後の扱いは借入先に確認しましょう。

残額を別のローンへ借り換える道もあります。フラット35の借換融資は、借入日から申込日まで1年以上、直前の1年間を正常に返済、申込時に満70歳未満などが条件です。審査や諸費用もあるため、借入先に確認しましょう。

一括返済して後悔しやすいのはどんなとき?

一括返済の後悔を数字で示す公的な調査は、確認できませんでした。民間の調査(マネーキャリア)はあるものの、母数や方法が示されていないため、根拠にはしません。国民生活センターの『国民生活』2026年7月号は、超長期の住宅ローンを検討する際の窓口での質問として、定年時点の残債を確かめる狙いを記しています。

狙いは、退職金で一括完済できる規模か、年金生活でも払い続けられる額かを知るためです。そこで、三菱UFJ銀行のコラム(2026年10月9日現在)が挙げる不利な点から、条件で整理します。不利な点は、手元資金の大幅な減少・住宅ローン控除の喪失・団信と疾病保障の終了です。

後悔しやすいのは、貯蓄を使い切り、病気や住宅の修繕など予期せぬ出費に対応できなくなる場合です。団信を失う点を見落とした場合や、控除期間中に住宅ローン控除を失う場合もあります。老後資金が足りなくなるかどうかは、判断ポイントの数字で確かめましょう。

共通するのは、手元資金と控除期間を確かめないまま返してしまうことです。先に自分の数字を当てはめておきましょう。

まとめ|住宅ローンの一括返済は退職後の生活費と老後資金を踏まえて判断しよう

退職金での一括返済は、利息の得よりも、完済後に手元へ何が残るかで決めるものです。定年のころは残りの期間が短く、減らせる利息は60歳以降で約11万〜34万円にとどまります。全額を急ぐ理由は、安心感です。

完済後に預貯金を含む金融資産が目安(約1,800万円強)を超えて残るなら、完済を選べます。足りないなら、一部返済にとどめるか、返済を続けて65歳ごろに見直す方法もあります。手続きでは、退職所得の申告書の提出と、機関ごとに違う申込期限が注意点です。

まず返済予定表で残高・適用金利・完済予定月を確かめ、年金見込額も見ておきましょう。判断に迷うときは、FPに相談する手もあります。

完済せずに返済が苦しくなったときの対処は、別の記事で整理しています。

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この記事を書いた人

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種資格保有。金融・保険・年金・税金・不動産分野を中心に、これまで1,000本以上の記事を執筆。金融記事の監修や編集にも携わり、公的機関の資料や一次情報をもとに、専門的な制度や仕組みをわかりやすく解説しています。

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