50代から新NISAを始めても、運用期間は意外と長いものです。資金を使い始める時期が、定年の日とは限らないからです。とはいえ、何を、どんな割合で買うのかは迷うところ。
株式だけで進めて値下がりが怖い。債券中心で守りすぎて増えない。どちらの不安も、配分を決めないまま始めると大きくなります。
本記事では、株式と債券の比率別に3つのポートフォリオ例(資産の組み合わせ方の例)を示します。運用期間とリスク許容度から自分に合う配分を選ぶ基準、オルカン一本で足りるのか、月3万円・5万円・8万円を10年積み立てた場合の試算も整理しました。読み終えたら、配分の例を1つ選び、毎月の積立額を決めるところまで進めてください。
なお、本記事は制度と考え方の紹介であり、特定の商品の購入を勧めるものではありません。個別の判断は、金融機関やファイナンシャルプランナーへの相談で補ってください。
50代から新NISAを始めても遅くない理由
遅いか早いかは、定年までの年数では決まりません。お金を使い始める時期から数えて決まります。
厚生労働省の令和7年簡易生命表によると、65歳の平均余命は男性19.68年、女性24.52年です。定年後も資産を取り崩しながら運用を続ければ、投資期間は10年では終わりません。
新NISA(少額投資非課税制度。投資で得た利益に税金がかからない仕組み)の非課税期間は無期限です。売却すれば、翌年以降に売った分の枠が戻ります。
年間の投資枠は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、併用すると合計360万円までです。生涯の非課税保有限度額は1,800万円で、うち成長投資枠は1,200万円が上限になります(金融庁、2026年11月時点)。
20代のような長さはありません。それでも、枠を使い切る必要はなく、手持ちの資金と時期に合わせて額を決められます。
悩むべきは「遅いかどうか」ではありません。いつ、いくら使うのか。そこから逆算して、無理のない額と配分を選びます。
50代におすすめの新NISAポートフォリオ3選
ポートフォリオとは、株式や債券といった資産をどんな割合で持つかの組み合わせを指します。ここでは、株式と債券の比率を変えた3つの例を並べました。
どれが正解、という配分はありません。見出しの順に、値動きは大きくなります。
各例には「株式が50%下がった場合」の目安も添えました。債券は動かないと仮定した単純計算で、過去の実績ではありません。
| 配分例 | 株式 | 債券 | 株式が50%下がった場合の目安 |
|---|---|---|---|
| 安定重視 | 30% | 70% | 約15%の下落 |
| バランス重視 | 50% | 50% | 約25%の下落 |
| 成長重視 | 80% | 20% | 約40%の下落 |
配分例は、次の3つです。
- 安定重視|株式30%・債券70%のポートフォリオ
- バランス重視|株式50%・債券50%のポートフォリオ
- 成長重視|株式80%・債券20%のポートフォリオ
それぞれの特徴を見ていきましょう。
安定重視|株式30%・債券70%のポートフォリオ
値下がりを小さく抑えたい人向けの配分例です。
債券とは、国や企業にお金を貸し、利子を受け取る仕組みの投資商品です。株式に比べて値動きは小さめですが、金利や為替の影響で価格は動きます。元本が保証されるわけではありません。
株式が半分に下がったと仮定すると、全体の下落は約15%にとどまります。1,000万円を運用していれば、評価額は約850万円です。
向くのは、資金を使い始める時期が5〜10年以内に迫っている人。値下がりの数字を見て眠れなくなりそうな人。退職金や預貯金で生活費の備えを別に確保している人も当てはまります。
増える速度は、ほかの2つより遅めです。物価が上がる局面では、お金の価値が目減りする点も頭に置いておきたいところです。守りを厚くした分、増やす力は小さくなります。
バランス重視|株式50%・債券50%のポートフォリオ
株式と債券を半々にする配分で、守りと増やす力の中間にあたります。
株式が半分に下がった場合、全体の下落は約25%です。1,000万円なら、評価額は約750万円まで下がる計算です。債券が下支えする分、株式100%より落ち込みは浅くなります。
リーマン・ショック(2008年)では、世界の株式が2007年から2009年にかけて半分以上下がりました。円換算で高値を回復するまでに6年以上かかったとする分析もあります。下落そのものより、戻るまでの時間が長いのです。
向くのは、資金を使い始めるまで10年前後ある人。ある程度の値下がりは受け入れられる人です。使う時期が近い分は、この配分とは別に、預貯金などで確保しておきます。
8資産に均等に分けるバランス型ファンドなど、1本でこれに近い配分を持てる商品もあります。ただし、ファンドごとに株債の比率は違うため注意が必要です。購入前に、目論見書(商品の説明書)で確認しておきましょう。
成長重視|株式80%・債券20%のポートフォリオ
値下がりを受け入れて、増やすことを優先する配分例です。
50代の全員に向く配分ではありません。対象は、余裕資金があり、定年後も15年以上運用を続けられる人に絞りたいところです。株式が半分に下がれば、全体で約40%の下落になります。
1,000万円が約600万円に減る計算です。世界の株式がリーマン・ショックで半分以上下がったことを考えると、起こりうる数字です。
それでも生活費が維持でき、積立を続けられるか。この問いに「はい」と答えられない人は、安定重視かバランス重視から選ぶほうが安全です。
比較の対象として、株式100%に近い全世界株式1本の運用もあります。成長重視は、それより債券を2割持つ分、値動きがやや小さい位置づけです。
50代が新NISAのポートフォリオを決める際の判断基準
3つの配分例のうち、どれを選ぶか。決め手は、運用期間・投資可能額・リスク許容度の3点です。順に見ていきましょう。
判断の軸は、次の3つに整理できます。
- 老後資金を使い始めるまでの運用期間
- 預貯金や生活費を踏まえた投資可能額
- 資産が値下がりしたときのリスク許容度
老後資金を使い始めるまでの運用期間
運用期間は「定年まで」ではなく、「その資金を使い始めるまで」で数えるのが出発点です。
資金を使う時期は、退職金の受取、年金の受給開始、住宅ローンの完済などで分かれます。年金は原則65歳から受け取れますが、66歳以降75歳までの間で受け取りを遅らせる繰下げもできます。増額率は1か月あたり0.7%で、上限は84%です(日本年金機構)。
繰下げを選ぶと、待つ間の生活費をどこから出すかが問題です。ここにNISAの資産を充てる考え方も一案です。
使い始めるまでが5年以内の資金は、株式の比率を低くします。5〜10年先なら、バランス重視が候補に入ります。10年以上先の資金は、成長重視も選択肢です。
金融庁は、国内外の株式・債券に分散して長く持つと、運用成績が年率2〜8%程度に収斂してきたと説明しています。ただし、5年程度の短い期間では、元本を割る期間もありました。
期間が短いほど、結果は振れます。過去の実績は将来を保証しません。
預貯金や生活費を踏まえた投資可能額
投資に回す額は、貯蓄の総額で決めるのではなく、先に引く金額を決めてから残りで考えます。
先に確保するのは、次の2つです。
- 生活防衛資金:病気や失業に備える、生活費の数か月分の預貯金
- 数年内に使う予定の資金:住宅の修繕費、子どもへの援助、車の買い替えなど
生活防衛資金を何か月分にするかに、公的な決まりはありません。働き方や家族構成で変わるため、自分の生活費から逆算します。引いたあとの余りが、投資に回せる額の上限です。
毎月の積立は、収入から支出を引いた余りの範囲に収めます。年間の投資枠360万円や、生涯の上限1,800万円は、あくまで上限です。使い切る必要はありません。
手順は次の4つです。
- 毎月の収入と支出を出す
- 生活防衛資金を確保する
- 数年内に使う資金を分ける
- 残りから積立額を決める
資産が値下がりしたときのリスク許容度
リスク許容度は、2つの軸で測ります。耐えられる金額と、耐えられる気持ちです。
金額の面では、評価額が3割、5割と下がっても、生活が維持できるかを確認します。評価額が減っても、使う予定のないお金なら、生活は変わりません。気持ちの面は、数字では測りにくいものです。
そこで、過去の下落を思い出してください。世界の株式は、リーマン・ショックで半分以上下がりました。同じことが起きたとき、積立を続けられるでしょうか。
自分に問いかけてみる質問を、3つ挙げておきます。
- 評価額が30%下がったら、生活費に影響が出るか
- 毎日の値動きが気になって、眠れなくなりそうか
- 下落中も、積立を止めずに続けられるか
1つでも「はい」がつくなら、株式の比率を下げた配分が合っています。リスク許容度は一度決めて終わりではありません。退職の時期が近づくたびに、見直しが必要です。
50代の新NISAで検討したいおすすめの投資信託
配分を決めたら、実際に何で持つかを選びます。投資信託とは、多くの投資家のお金をまとめて、専門家が株式や債券に分散して運用する商品です。
ここでは代表的な4種類の特徴を比べます。特定の商品を勧めるものではなく、役割の違いを知るための例です。費用(信託報酬)は2026年10月時点で、証券会社の掲載値によります。
最新の数値は、運用会社の月次レポートと目論見書で確認してください。信託報酬とは、運用を任せている間、毎年かかる手数料のことです。保有する限り続くため、長く持つほど差が効いてきます。
ここで取り上げる投資信託は、次の4種類です。
- 全世界株式インデックスファンド(オルカン)|一本運用の強みと弱点
- 米国株式インデックスファンド(S&P500)|オルカンとの違い
- 債券インデックスファンド|値動きを抑える役割
- バランス型ファンド|株式・債券の分散を一本で
それぞれの役割を見ていきましょう。
全世界株式インデックスファンド(オルカン)|一本運用の強みと弱点
オルカンとは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の通称で、日本を含む世界の株式に1本で分散投資できるファンドです。インデックスファンドは、特定の指数に連動する成績を目指す運用の型を指します。信託報酬は、年率0.05775%以内(税込)とされています。
強みは、1本で世界中の株式に分散できる点です。手間がかからず、運用の判断も少なくて済みます。
弱点は、債券を含まないこと。株式が下がれば、その分がそのまま評価額に出ます。株式100%に近い値動きになるため、成長重視の配分より、さらに値動きが大きくなります。
では、50代はオルカン一本で足りるのか。答えは、資金を使い始める時期と、値下がりへの耐性で分かれます。
- 一本で足りる人:使い始めまで15年以上あり、半分近い下落を受け入れられる人
- 足りない人:使い始めが10年以内に迫る人、評価額の大きな変動に耐えにくい人
後者の場合は、債券ファンドや預貯金を組み合わせて、株式の比率を下げます。
米国株式インデックスファンド(S&P500)|オルカンとの違い
S&P500は、米国を代表する大型株500社の値動きを示す指数です。連動を目指す「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の信託報酬は、年率0.0814%以内(税込)とされています。オルカンとの違いは、投資先の広さです。
| 項目 | オルカン | S&P500連動型 |
|---|---|---|
| 投資先 | 世界の株式 | 米国の大型株500社 |
| 信託報酬(年率・税込) | 0.05775%以内 | 0.0814%以内 |
| 分散の幅 | 広い | 米国に集中 |
米国が好調な局面では、S&P500のほうが伸びやすくなります。逆に米国が不調なときは、下落の影響が大きく出ます。
50代では、オルカンの代わりというより、集中度を理解したうえで選ぶ位置づけです。値動きの大きさは、オルカンと同じか、それ以上と見ておくほうが安心です。
債券インデックスファンド|値動きを抑える役割
債券ファンドは、株式の値動きを和らげる役割で組み入れます。3つの配分例でいう債券の部分を、実際に持つ手段です。
例として、「eMAXIS Slim 先進国債券インデックス(除く日本)」の信託報酬は、年率0.154%以内(税込)とされています。オルカンの2倍以上の水準で、費用は高めです。国内の債券に投資するインデックスファンドもあります。
先進国債券は、為替ヘッジ(為替の変動を抑える取引)をしない方針です。円高になると、評価額が下がる要因になります。債券だからといって、値動きがないわけではありません。
債券ファンドには、成長投資枠のみが対象のものがあります。つみたて投資枠で買えるかどうかは、商品ごとに違います。口座を開く証券会社の取扱一覧と、金融庁が公表している対象商品の届出一覧で確認しましょう。
バランス型ファンド|株式・債券の分散を一本で
バランス型は、株式・債券・不動産(リート)などに、1本でまとめて分散できるファンドです。
「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」は、世界の株式、債券、リートを均等に組み合わせた指数に連動を目指します。信託報酬は年率0.143%以内(税込)とされています。為替ヘッジは原則しません。
注意したいのは、株債の比率がファンドごとに違うことです。8資産に均等に分けると、株式の割合は「株50・債50」とは別の数字になります。購入前に、月次レポートで実際の構成比を確かめてください。
比率を自分で変えられない点も、押さえておきたいところです。投資の経験が浅い人が、1本で始める手段としては扱いやすい商品です。反面、「株30・債70」のような指定の配分には、そのままでは合いません。
50代が新NISAで10年間積み立てた場合のシミュレーション
月3万円、5万円、8万円を10年間積み立てると、いくらになるのか。
計算の条件をそろえました。毎月の月末に積み立て、運用益は月ごとに積み上がります。税金と手数料は考えません。
年率は、−2%、1%、3%、5%の4通りを置きました。これは予測ではなく、あくまで仮定です。
将来の運用成果を保証するものではありません。マイナスの年率も入れたのは、元本を割るケースを知っておくためです。
試算は、次の3つの積立額で行います。
- 毎月3万円を10年間積み立てた場合
- 毎月5万円を10年間積み立てた場合
- 毎月8万円を10年間積み立てた場合
それぞれの結果を見ていきましょう。
毎月3万円を10年間積み立てた場合
元本は360万円になります。
| 年率 | 評価額 | 運用益 |
|---|---|---|
| −2% | 約327万円 | 約−33万円 |
| 1% | 約378万円 | 約18万円 |
| 3% | 約419万円 | 約59万円 |
| 5% | 約466万円 | 約106万円 |
年率3%なら、運用益は約59万円。年率5%で約106万円です。年率−2%が続くと、約327万円で、元本を33万円ほど下回ります。
月3万円は、年間では36万円です。つみたて投資枠の年間120万円の3割にあたります。
毎月5万円を10年間積み立てた場合
元本は600万円になります。
| 年率 | 評価額 | 運用益 |
|---|---|---|
| −2% | 約544万円 | 約−56万円 |
| 1% | 約631万円 | 約31万円 |
| 3% | 約699万円 | 約99万円 |
| 5% | 約776万円 | 約176万円 |
年率3%で約699万円、運用益は約99万円です。年率−2%なら約544万円で、元本を56万円ほど割ります。
月5万円は、年間では60万円。つみたて投資枠の年間120万円の、ちょうど半分にあたります。
毎月8万円を10年間積み立てた場合
元本は960万円になります。
| 年率 | 評価額 | 運用益 |
|---|---|---|
| −2% | 約871万円 | 約−89万円 |
| 1% | 約1,009万円 | 約49万円 |
| 3% | 約1,118万円 | 約158万円 |
| 5% | 約1,242万円 | 約282万円 |
年率3%なら、約1,118万円です。運用益は約158万円になります。年率−2%の場合は約871万円で、元本を89万円ほど下回ります。
月8万円は、年96万円。つみたて投資枠の年間120万円に収まります。
額が大きいほど、利益も損失も大きく動きます。生活費や、先に確保する資金との兼ね合いで、無理のない額かを確かめてから決めたいところです。
50代の新NISAで失敗しやすいパターンと対策
ここまでは、何を選ぶかの話でした。この見出しでは、やってしまいがちな失敗を3つ挙げます。
失敗しやすいパターンは、次の3つです。
- 退職金の一括投資
- 値下がり時の慌てた売却
- 生活資金までの投資
退職金の一括投資
退職金が入った直後に、まとめて投資する。この動きには、リスクがあります。
投資した直後に値下がりが起きると、全額がその影響を受けます。数年かけて少しずつ買えば、高いときも安いときも買うことになり、買う時期が分散されるわけです。これを時間分散と呼びます。
対策は3つです。
- 生活費や、住宅ローンの返済に充てる分を先に分ける
- 残りを、数年に分けて投資する
- 値下がりしても売らずに済む額に抑える
新NISAの年間投資枠は360万円なので、一度に使える額にも上限があります。退職金の全額を、1年で投資に回すことはできません。
一括と積立のどちらが有利かは、相場次第です。退職後の生活を支えるお金だからこそ、値動きの影響を受ける額を絞っておくことが肝心です。
値下がり時の慌てた売却
値下がりが続くと、不安から売りたくなります。しかし、下がった時点で売れば、その損失が確定します。その後の回復も、受け取れません。
リーマン・ショックでは、世界の株式が半分以上下がりました。円換算で回復まで6年以上かかったとする分析もあります。それでも、持ち続けた人は、回復を待てました。
対策は、売らなくて済む状態を先に作っておくことです。
- 使う予定のある資金は、投資に回さず、預貯金などで確保する
- 値下がりに耐えられる配分を、最初に選ぶ
- 評価額を頻繁に見る習慣を、いったん手放す
最後の項目は、出典のある決まりではなく、工夫の一例です。
生活資金までの投資
「増やしたい」気持ちが強いと、生活費まで投資に回しがちです。
値下がりしたときに生活費が足りなくなれば、安く売って現金に換えるしかありません。これが、最も避けたい形。
投資に回すのは、使う予定のない余裕資金の範囲までです。生活費は、預貯金などで先に守っておきましょう。
預貯金以外の置き場としては、個人向け国債が候補です。財務省の案内では、1万円から購入でき、発行から1年が過ぎれば、原則としていつでも中途換金できます。変動10年、固定5年、固定3年の3種類があり、利子には20.315%の税金がかかります。
債券ファンドと違い、NISAの対象外です。ただ、生活資金の置き場としては、選択肢の1つです。
50代が新NISAのポートフォリオを運用する際のポイント
失敗を避けたうえで、運用で押さえたい4つのポイントを整理しました。
運用のポイントは、次の4つです。
- つみたて投資枠と成長投資枠を使い分ける
- 預貯金や個人向け国債などNISA対象外の資産も組み合わせる
- iDeCoを併用して老後資金の柱を増やす
- 退職時期に合わせて資産配分と取り崩し方を見直す
つみたて投資枠と成長投資枠を使い分ける
新NISAには、2つの枠があります。
| 項目 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
|---|---|---|
| 年間の投資枠 | 120万円 | 240万円 |
| 生涯の上限 | 総枠1,800万円の範囲内 | 1,200万円 |
| 併用 | 可能 | 可能 |
併用した場合の年間の上限は、合計360万円です。50代では、毎月の積立をつみたて投資枠に置く形が軸です。退職金や預貯金から、まとまった額を投資するときは、成長投資枠を使います。
2つの枠は、別々の金融機関に分けて使えません。同じ金融機関で、両方を使う仕組みです。
売却すると、翌年以降に、売った商品の簿価分の枠が戻ります。取り崩しの時期にも、この仕組みが役に立ちます。
預貯金や個人向け国債などNISA対象外の資産も組み合わせる
ポートフォリオは、NISAの中だけで考えません。預貯金や国債を含めた、家計全体で配分を決めます。
NISAで株式を持ち、NISAの外で預貯金や個人向け国債を持つ。この形でも、「株式30%・債券70%」に近い配分は作れます。債券ファンドの代わりに、国債を債券の部分に充てる考え方です。
個人向け国債の金利は、募集のたびに変わります。変動10年は半年ごとに見直され、固定5年と固定3年は発行時の金利が満期まで続きます。最新の金利は、財務省の募集ページで確認してください。
銀行の定期預金は、金融機関によって金利が違います。口座を作る前に、各行の公式情報を見比べてください。
iDeCoを併用して老後資金の柱を増やす
iDeCoは、自分で掛金を出して運用し、原則60歳以降に受け取る私的年金制度です。掛金が所得から差し引かれ、税金が軽くなります。
50代で始めるなら、受け取れる年齢への注意が欠かせません。老齢給付金は、60歳時点での通算加入者等期間(掛けた期間と運用だけした期間を足した年数)で決まります。
| 通算加入者等期間 | 受け取れる年齢 |
|---|---|
| 10年以上 | 60歳 |
| 8年以上10年未満 | 61歳 |
| 6年以上8年未満 | 62歳 |
| 4年以上6年未満 | 63歳 |
| 2年以上4年未満 | 64歳 |
| 1か月以上2年未満 | 65歳 |
iDeCoは、受け取るまで引き出せません。生活資金とは、分けて考えます。
会社に企業年金があるかで、掛金の上限も変わります。勤務先への確認が先です。
退職時期に合わせて資産配分と取り崩し方を見直す
定年が近づいたら、資金を使い始める時期に合わせて配分を見直します。
50代前半は、積立を増やして資産を育てる時期。50代後半は、株式の比率を少しずつ下げ、守りへ移る時期です。退職金を受け取るとき、年金を受け取る1〜2年前、繰下げを選ぶときが、見直しの目安になります。
取り崩しの方法は、主に3つあります。
- 毎年、決まった額を売却する(定額)
- 毎年、評価額の一定割合を売却する(定率)
- 売却せず、分配金を受け取る
NISAは、売却した分の枠が翌年以降に戻ります。必要な分だけ売る使い方と相性がよい制度です。
取り崩しの順序は、税金や個人の状況で変わります。迷うときは、年金事務所やFPなどの専門家に確認してください。
50代の新NISAでよくある質問
積立額、夫婦の口座、証券会社。始める前に気になりやすい3つの疑問に答えます。
質問は、次の3つです。
- 毎月いくら積み立てている人が多い?
- 夫婦それぞれでNISA口座を開いたほうがよい?
- どの証券会社で新NISA口座を開けばよい?
毎月いくら積み立てている人が多い?
全員に共通する正解の金額はありません。
収入も、支出も、先に確保しておきたい資金も、人によって違うからです。他人の平均に合わせると、続かない額を選んでしまう恐れがあります。決め方は、判断基準の見出しで示したとおりです。
収入から支出を引き、さらに先に確保する資金を除いた余りの範囲に収めます。月3万円、5万円、8万円はあくまで試算の例で、これより少ない額から始めてもかまいません。月1万円でも、非課税で積み立てる意味は同じです。
夫婦それぞれでNISA口座を開いたほうがよい?
NISA口座は、本人名義で、1人につき1口座だけ開けます。夫婦それぞれが自分の口座を持てば、それぞれの枠を使えます。生涯の非課税保有限度額は、1人あたり1,800万円です。
夫婦で運用すると、枠を使える額が広がります。一方、夫の枠が余っても、妻が使うことはできません。
運用の方針は、夫婦で共有しておきましょう。資金を使い始める時期や、値下がりをどこまで許せるかは、家計全体の問題だからです。
どの証券会社で新NISA口座を開けばよい?
選ぶ基準は、手数料・取扱商品・サポートの3つです。
手数料を抑えたい人はネット証券、対面で相談したい人は店舗のある証券会社が向きます。ただし、積立の設定方法、取り扱うファンド、ポイントの仕組みは会社ごとに違います。口座を作る前に、各社の公式情報で確かめたいところです。
1年のうちに使える金融機関は、1つだけです。変更は年単位でできます。前年の10月1日から、その年の9月30日までに届出を出す必要があります(金融庁)。
後で変更もできますが、手続きに手間はかかります。最初に、使いたいファンドが取り扱われているかを確認しておくと安心です。
まとめ|運用期間とリスク許容度から配分を決め、少額の積立から始めよう
50代の新NISAは、定年までの年数ではなく、資金を使い始める時期から逆算して配分を選びます。
安定重視、バランス重視、成長重視。3つの配分例は、どれも正解ではありません。使い始めまでが短ければ株式を減らし、長ければ増やします。
値下がりに耐えられる幅も、配分を決める材料です。オルカン一本で足りるかどうかも、同じ基準で決まります。
15年以上先に使う資金で、半分近い下落を受け入れられるなら、一本の運用も選択肢です。そうでなければ、債券や預貯金を組み合わせます。
毎月の積立額は、収入から支出と、先に確保する資金を引いた余りの範囲で決めます。月3万円なら、10年で元本は360万円です。
今日できることは、3つあります。自分の資金を使い始める時期を、書き出す。評価額が30%下がったときの気持ちを、想像してみる。
そのうえで、配分の例を1つ選び、積立額を決める。少額から始めれば、値動きに慣れながら、配分を見直す余地も残せます。
