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中小企業の退職金平均はいくら?勤続年数・学歴・業種別の相場と計算方法を解説

退職金 平均 中小企業

自分が受け取る退職金は、同じ規模の会社と比べて多いのか少ないのか。相場を知らないまま定年が近づくと、老後資金の見通しが立たず、不安が膨らみます。自社の制度を見直す立場でも、判断の物差しがなければ動けません。

中小企業の退職金は、勤続年数・学歴・業種・企業規模で金額が大きく変わります。しかも調査ごとに対象や定義が違い、数字を安易に並べると判断を誤ります。

本記事では、公的調査をもとに中小企業の退職金の平均額を条件別に整理し、確認方法や備え方まで解説します。自分に近い条件の数字を確かめて、次の一手を決める材料にしてください。

目次

中小企業の退職金の平均額はいくら?【勤続年数別】

東京都の調査(令和6年版)によると、定年時のモデル退職金(会社都合)は、大学卒で1,149万5,000円、高校卒で974万1,000円です。都内の中小企業が示す金額で、数字は2026年10月時点の公表値を使います。

本記事の金額は、出どころの違う2種類に分かれます。

  • 東京都「中小企業の賃金・退職金事情」令和6年版:都内の従業員10〜299人の企業が示す「モデル退職金」です。学校を卒業してすぐ入社し、普通の能力と成績で勤務した人の水準であり、実際の退職者の平均ではありません。調査時点は令和6年7月31日です。
  • 厚生労働省「就労条件総合調査」令和5年:従業員30人以上の民営企業で、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者に実際に支払われた1人平均の金額です。

退職金は減っているのか、まず推移を確かめます。制度のある企業の割合は下がっていますが、金額は学歴によって上下が分かれます。

調査項目前回今回
東京都(令和4年版→令和6年版)退職金制度がある企業の割合71.5%64.2%
同上定年時のモデル退職金(大学卒)1,091万8,000円1,149万5,000円
同上定年時のモデル退職金(高校卒)994万円974万1,000円
厚生労働省(平成30年→令和5年)退職給付制度がある企業の割合80.5%74.9%
同上定年退職者の1人平均(大学・大学院卒、管理・事務・技術職)1,983万円1,896万円
同上定年退職者の1人平均(高校卒、管理・事務・技術職)1,618万円1,682万円

引用:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」令和4年版・令和6年版、厚生労働省「就労条件総合調査」平成30年・令和5年。

回答した企業は毎回同じではありません。同じ企業の変化ではなく、調査結果の違いとして読んでください。

勤続年数の区切りは、次の3つです。

  1. 勤続5〜10年の退職金平均額
  2. 勤続11〜25年の退職金平均額
  3. 勤続26〜40年の退職金平均額

それぞれの区切りで、金額の水準を確認します。

勤続5〜10年の退職金平均額

勤続5年の金額は、東京都の調査にありません。モデル退職金の表は勤続10年から始まります。

勤続10年の自己都合退職は、高校卒98万5,000円、高専・短大卒102万1,000円、大学卒112万5,000円で、月収の3.9か月分にあたります。会社都合なら、高校卒126万4,000円、大学卒144万8,000円と、30万円前後高くなります。

学歴自己都合会社都合
高校卒98万5,000円(3.9月)126万4,000円(5.0月)
高専・短大卒102万1,000円(3.9月)152万8,000円(5.8月)
大学卒112万5,000円(3.9月)144万8,000円(5.0月)

引用:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」令和6年版 図表8-1(勤続10年のモデル退職金。月数は所定内賃金に対する支給月数)。

勤続10年の退職金は、月収の4〜6か月分に収まる水準です。

勤続11〜25年の退職金平均額

勤続が延びるほど、金額は加速します。大学卒の自己都合では、勤続10年の3.9月分が、25年で13.0月分に伸びます。年数は2.5倍、支給月数は約3.3倍です。

学歴勤続15年勤続20年勤続25年
高校卒(自己都合)190万3,000円288万1,000円434万2,000円
高校卒(会社都合)237万3,000円342万8,000円510万円
大学卒(自己都合)209万3,000円346万8,000円507万3,000円
大学卒(会社都合)255万9,000円408万1,000円615万6,000円

引用:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」令和6年版 図表8-1(モデル退職金)。

厚生労働省の調査でみた実績は、勤続20〜24年の定年退職者で、大学・大学院卒が1,021万円、高校卒(管理・事務・技術職)が557万円でした。勤続25〜29年は、1,559万円と618万円です。前提が違うため、モデルとの差は読みません。

勤続26〜40年の退職金平均額

勤続30年の東京都のモデル退職金は、大学卒が自己都合750万7,000円、会社都合776万2,000円で、高校卒は575万7,000円と657万円です。定年時(会社都合)は、高校卒974万1,000円、高専・短大卒992万円、大学卒1,149万5,000円に達します。

厚生労働省の実績は、勤続年数が長いほど跳ね上がります。

学歴・職種勤続30〜34年勤続35年以上
大学・大学院卒(管理・事務・技術職)1,891万円2,037万円
高校卒(管理・事務・技術職)1,094万円1,909万円
高校卒(現業職)800万円1,471万円

引用:厚生労働省「就労条件総合調査」令和5年 第23表(定年退職者の1人平均退職給付額)。

高校卒(管理・事務・技術職)は、勤続30〜34年から35年以上で815万円増えます。勤続40年の区分はなく、最長は「35年以上」です。調査の対象も定義も違うため、東京都との金額は並べて優劣を決めません。

中小企業の退職金の平均額を条件別に比較

同じ勤続年数でも、企業規模・学歴・業種で金額は動きます。実際に支払われた金額(厚生労働省)を中心に比べます。

比べる条件は、次の3つです。

  1. 【企業規模別】大企業・中小企業の退職金平均額
  2. 【学歴別】大卒・高卒などの退職金平均額
  3. 【業種別】製造業・非製造業の退職金平均額

条件ごとに、金額の差を確認します。

【企業規模別】大企業・中小企業の退職金平均額

従業員1,000人以上の大学・大学院卒の定年退職者は2,191万円です。30〜99人は1,282万円で、909万円の差があります。100〜299人でも1,347万円と、1,000人以上の約6割にとどまります。

企業規模大学・大学院卒(管理・事務・技術職)高校卒(管理・事務・技術職)高校卒(現業職)
1,000人以上2,191万円2,103万円1,541万円
300〜999人1,662万円1,389万円1,060万円
100〜299人1,347万円1,208万円868万円
30〜99人1,282万円803万円619万円

引用:厚生労働省「就労条件総合調査」令和5年 表37(定年退職者、勤続20年以上かつ45歳以上)。

この調査に、中小企業にあたる300人未満の区分はありません。本記事では、100〜299人と30〜99人を中小企業の目安とします。月収換算でも、大学・大学院卒は1,000人以上が39.0月分、30〜99人が28.2月分と開いています。

【学歴別】大卒・高卒などの退職金平均額

東京都のモデル退職金(定年時、会社都合)は、高校卒974万1,000円、高専・短大卒992万円、大学卒1,149万5,000円です。大学卒と高校卒の差は175万4,000円です。

厚生労働省の実績は、学歴と職種で3つに分かれます。

学歴・職種定年退職者の1人平均月収換算
大学・大学院卒(管理・事務・技術職)1,896万円36.0月分
高校卒(管理・事務・技術職)1,682万円38.6月分
高校卒(現業職)1,183万円34.3月分

引用:厚生労働省「就労条件総合調査」令和5年 第22表。

大学・大学院卒と高校卒(現業職)の差は713万円です。一方、月収換算では高校卒(管理・事務・技術職)が大学・大学院卒を上回ります。月収が低い分、月数で厚く支給される構図で、見落としやすい点です。

【業種別】製造業・非製造業の退職金平均額

金額の区分は、「製造業」と「非製造業」の2つだけです。非製造業は、建設業、卸売業・小売業、サービス業など、製造業以外のすべてを指します。

産業規模計1,000人以上100〜299人30〜99人
調査産業計1,603万円1,982万円1,088万円916万円
製造業1,436万円1,732万円943万円893万円
非製造業1,686万円2,110万円1,165万円927万円

引用:厚生労働省「就労条件総合調査」令和5年 第504表(定年退職者、学歴計・職種計、勤続20年以上かつ45歳以上)。

製造業は非製造業より、規模計で250万円低くなっています。差は規模が小さいほど縮み、30〜99人では34万円にとどまります。製造業を勤続年数別にみると、20〜24年が582万円、25〜29年が709万円、30〜34年が1,146万円、35年以上が1,638万円です。

建設業など個別の業種は、金額が出ていません。参考までに、退職給付制度がある企業の割合は、製造業85.6%、建設業82.9%、卸売業・小売業77.4%、宿泊業・飲食サービス業42.2%です。

中小企業の退職金額を確認する際のポイント

平均額と自分の金額を比べる前に、確かめることが3つあります。支給の条件、計算の仕組み、退職理由による差です。

確認するポイントは、次の3つです。

  1. 支給条件と最低勤続年数を確認する
  2. 計算方法と算定基準を把握する
  3. 自己都合・会社都合で変わる支給率を比べる

自社の規程と照らしながら、1つずつ確認します。

支給条件と最低勤続年数を確認する

退職金制度がある企業は、東京都の調査で64.2%、ない企業は34.4%です。まず、自社の退職金規程で制度の有無を確かめてください。

制度があっても、勤続年数が足りなければ出ない場合があります。条件が壁です。

退職一時金を受け取るための最低勤続年数は、自己都合で「3年」が47.3%と最も多く、次いで「1年」が14.2%、「2年」が11.6%です。会社都合でも、最も多いのは「3年」の34.4%でした。

中退共(中小企業退職金共済制度)では、掛金の納付が1年未満だと退職金は支給されません。対象になる従業員の範囲、最低勤続年数、退職理由ごとの扱いは、会社ごとに違います。規程で事前に確かめてください。

計算方法と算定基準を把握する

退職一時金の算出方法で最も多いのは、「退職金算定基礎額×支給率」の42.0%です。次いで「勤務年数に応じた一定額」が29.9%、ポイント制が10.6%です。

算定基礎額は、「退職時の基本給」が45.0%で最多、「基本給×一定率」が27.8%と続きます。仮に退職時の基本給が30万円、勤続年数に応じた支給率が40なら、退職金は1,200万円です。

基準が退職時の基本給なら、基本給が下がった状態で退職すると、金額も下がる仕組みです。自分の見込み額を出すには、規程から算定基礎額、支給率、勤続年数別の表の3つを拾います。

引用:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」令和6年版 図表7-3・7-4。

自己都合・会社都合で変わる支給率を比べる

同じ勤続年数でも、自己都合は会社都合より低くなります。東京都のモデル退職金で高校卒をみると、自己都合は会社都合の、勤続10年で78%、20年で84%、30年で88%です。大学卒の勤続30年では、97%まで近づきます。

厚生労働省の実績(大学・大学院卒、管理・事務・技術職)では、定年1,896万円、会社都合1,738万円、自己都合1,441万円です。最も高いのは早期優遇退職の2,266万円で、定年を370万円上回ります。退職時期の選び方で、金額が数百万円動きます。

中小企業が導入できる主な退職金制度

中小企業が退職金を用意する方法は、自社で資金を用意する退職一時金、国の制度に預ける中退共、運用を従業員に任せる企業型DCに分かれます。

導入できる制度は、次の3つです。

  1. 退職一時金制度
  2. 中小企業退職金共済制度(中退共)
  3. 企業型確定拠出年金(企業型DC)

仕組みと金額を、制度ごとに確認します。

退職一時金制度

退職時に一括で支払う制度です。東京都の調査では、制度がある423社のうち、退職一時金のみが76.1%、一時金と退職年金の併用が17.3%、退職年金のみが6.6%でした。

一時金の資金の用意は、社内準備が59.2%、中退共が50.9%、退職金保険が10.1%、特定退職金共済が6.8%です(複数回答)。退職年金には確定給付企業年金(DB)もあり、DBに拠出限度額はありません。

中小企業退職金共済制度(中退共)

国の制度で、掛金は事業主が全額負担し、退職金は従業員に直接支払われます。従業員数か資本金のどちらかが基準内であれば、加入できます。

製造・建設業等は300人以下または3億円以下、卸売業は100人以下または1億円以下です。サービス業は100人以下または5,000万円以下、小売業は50人以下または5,000万円以下です。

掛金月額は5,000〜30,000円で選びます。新規加入では、掛金月額の2分の1(1人5,000円まで)を加入後4か月目から1年間、国が助成します。

掛金月額納付10年納付20年納付30年
10,000円126万5,600円266万6,600円421万3,100円
20,000円253万1,200円533万3,200円842万6,200円
30,000円379万6,800円799万9,800円1,263万9,300円

引用:中退共本部「国の退職金制度 よくわかるダイジェスト版」2026年3月(基本退職金のみ。付加退職金は含まない)。

月額30,000円で30年納付しても、基本退職金は約1,264万円にとどまります。これが上限の水準です。

企業型確定拠出年金(企業型DC)

事業主が掛金を拠出し、従業員が自分で金融商品を選んで運用する企業年金です。受け取る額は、運用の結果で変わります。

拠出の上限は、2026年12月1日に月額5.5万円から6.2万円へ上がります。DBなど他制度がある場合は、6.2万円から他制度の掛金相当額を引いた範囲です。従業員が上乗せして拠出するマッチング拠出の上限も、6.2万円から事業主の拠出額を引いた額に変わります。

引き上げに伴い、規約の変更が必要になる場合があります。導入や変更は、運営管理機関や社会保険労務士に確かめてください。

中小企業の退職金が平均より少ない場合の老後資金対策

自分の退職金が相場を下回ったときは、不足分を積み立てるか、働いて収入を延ばして埋めます。

不足分を埋める方法は、次の3つです。

  1. iDeCoで老後資金を積み立てる
  2. NISAで長期的な資産形成を始める
  3. 定年後も働いて老後の収入を確保する

それぞれの制度の枠と数字を確認します。

iDeCoで老後資金を積み立てる

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金・運用益・受け取り時の3段階で税制優遇があります。原則60歳まで引き出せず、加入できるのは20歳以上65歳未満の公的年金の被保険者です。

企業年金のない会社員の掛金上限は、月2.3万円です。2026年12月から、月6.2万円になります。

運用益は含めません。掛金だけで、月2.3万円を10年続けると276万円、月6.2万円なら744万円の積み立てです。

企業型DCに加入している場合は、マッチング拠出を使っていないことが併用の条件です。受け取り時の税金は、別記事で詳しく解説しています。

NISAで長期的な資産形成を始める

新NISAは、つみたて投資枠が年120万円、成長投資枠が年240万円、あわせて年360万円まで投資できます。生涯の非課税保有限度額は1,800万円で、成長投資枠はそのうち1,200万円までです。

非課税保有期間は無期限です。つみたて投資枠の年120万円は、月10万円ずつ積み立てた額にあたります。対象は18歳以上です。

iDeCoは原則60歳まで引き出せず、NISAは期間の定めがありません。性格が違う制度のため、どちらをどれだけ使うかは、時期や家計で変わります。個別の相談は、ファイナンシャルプランナーに確かめてください。

定年後も働いて老後の収入を確保する

60歳以上65歳未満で働く場合は、高年齢雇用継続給付を受けられることがあります。賃金が60歳到達時の75%未満に下がった一般被保険者が対象で、被保険者期間5年以上が条件です。

給付額は、各月の賃金の最大10%です。賃金が60歳到達前6か月の平均賃金の64%以下に下がれば、賃金の10%が支給されます。平均賃金40万円が24万円に下がった場合、給付は月2.4万円、年28.8万円です。

給付率は、2025年3月31日までに60歳になった人は15%でした。支給限度額などで減額や不支給になる場合もあり、対象かどうかは、ハローワークで確かめてください。

まとめ|自分の退職金を相場と比べ、不足分の備えを決める

中小企業の退職金は、勤続年数・学歴・業種・企業規模で大きく変わります。東京都の調査では、定年時のモデル退職金は大学卒1,149万5,000円、高校卒974万1,000円でした。

自分の条件に近い数字を見つけて、会社の退職金規程から見込み額を出してください。相場より低ければ、iDeCoやNISA、働き方の見直しで不足分を埋める道があります。数字がそろえば、備える額は決まります。

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この記事を書いた人

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種資格保有。金融・保険・年金・税金・不動産分野を中心に、これまで1,000本以上の記事を執筆。金融記事の監修や編集にも携わり、公的機関の資料や一次情報をもとに、専門的な制度や仕組みをわかりやすく解説しています。

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