「もし夫に万一のことがあったら、遺族年金はいくらもらえるのだろう」
「制度の説明を読んでも、自分の場合の金額が分からない」
このような疑問をお持ちではありませんか。もどかしさが、不安を大きくします。
先に答えを書きます。妻が58歳で18歳年度末までの子がいない場合、夫の年金月額が20万円なら、遺族年金は月約15.0万円です。内訳は、遺族厚生年金が約9.7万円、中高齢寡婦加算が約5.3万円です。
年額にすると約180万円になります。金額は令和8年度のものです。
ここで示すのは、夫に万一のことがあった場合の目安にすぎません。実際の金額は、亡くなった時点の年金記録で決まります。そこで本記事では、以下の内容について詳しく解説します。
- 夫の年金額別の遺族年金の早見表
- 遺族基礎年金・遺族厚生年金・中高齢寡婦加算の計算方法
- 家族構成別の受給額と、65歳以降の変化
- 遺族年金だけで足りない場合の備え
手元のねんきん定期便とあわせて、読み進めてください。
遺族年金はいくらもらえる?夫の年金額別の早見表
夫が会社員として厚生年金に加入していたなら、妻が受け取る遺族年金の柱は遺族厚生年金です。早見表を見る前に、前提を4つ固定します。
- 夫の年金月額は、老齢基礎年金(満額)と老齢厚生年金(報酬比例部分)の合計とします。ねんきん定期便の見込額と同じ考え方です。
- 加給年金などの加算は、夫の年金月額に含めない前提です。
- 妻は58歳で、18歳年度末までの子はなし。
- 金額は令和8年度のもので、月額は円未満を切り捨てています。
遺族厚生年金は、夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。夫の年金月額から老齢基礎年金の満額(月70,608円)を引くと、報酬比例部分が出ます。
妻が40歳以上65歳未満なら、ここに中高齢寡婦加算が上乗せされます。年635,500円、月に直すと約52,958円です。
| 夫の年金月額 | 遺族厚生年金(月額) | 加算込みの合計(妻64歳まで) |
|---|---|---|
| 10万円 | 22,044円 | 約7.5万円 |
| 12万円 | 37,044円 | 約9.0万円 |
| 15万円 | 59,544円 | 約11.3万円 |
| 17万円 | 74,544円 | 約12.8万円 |
| 18万円 | 82,044円 | 約13.5万円 |
| 20万円 | 97,044円 | 約15.0万円 |
| 25万円 | 134,544円 | 約18.8万円 |
| 30万円 | 172,044円 | 約22.5万円 |
出典:日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」の計算式をもとに試算(2026年11月時点)。
表の「夫の年金月額」に入れる数字には、落とし穴があります。ねんきん定期便の見込額は、60歳や65歳まで働いた場合の金額です。
夫が60歳で亡くなれば、遺族厚生年金は亡くなった時点までの加入記録で計算されます。見込額より低くなる可能性があります。正確な金額は、年金事務所に相談して確認してください。
夫の年金月額ごとの受給額を、次の3つのケースで見ます。
- 夫の年金が月15万円の場合
- 夫の年金が月20万円の場合
- 夫の年金が月25万円の場合
夫の年金が月15万円の場合
夫の年金月額が15万円なら、報酬比例部分は79,392円です。その4分の3にあたる59,544円が遺族厚生年金になります。中高齢寡婦加算の約5.3万円を足すと、妻が64歳までの受給額は月約11.3万円です。
65歳になると加算は終わります。遺族厚生年金は約6.0万円です。妻自身の老齢基礎年金(満額で月70,608円)を合わせれば、約13.0万円になります。
月11万円台で暮らせるのか。生活費との比較は、後半で扱います。
夫の年金が月20万円の場合
この記事の中心になるケースです。報酬比例部分は129,392円で、4分の3の97,044円が遺族厚生年金になります。加算の52,958円と合わせて、64歳までは月約15.0万円、年額では約180万円です。
遺族年金は非課税なので、この額がほぼそのまま手取りです。65歳以降は、遺族厚生年金に妻自身の老齢基礎年金が加わって約16.8万円になります。詳しくは後の章で見ていきます。
ただし、20万円が65歳時点の見込額なら、夫が60歳で亡くなったときの実績は下回ります。夫が厚生年金に加入中に亡くなった場合は、加入期間が25年(300月)に満たなくても、300月として計算される救済があります。25年以上加入していれば、気にしなくてかまいません。
夫の年金が月25万円の場合
夫の年金月額が25万円なら、報酬比例部分は179,392円です。遺族厚生年金は134,544円で、加算込みの合計は月約18.8万円になります。65歳以降は、妻の老齢基礎年金を足して約20.5万円です。
夫の年金が5万円増えるごとに、遺族厚生年金は約3.75万円増えます。報酬比例部分の4分の3だからです。一方、中高齢寡婦加算は夫の年金額によらず一定です。
遺族年金の受給額を決める給付の種類と計算方法
遺族年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類からなります。妻には、条件を満たせば中高齢寡婦加算も上乗せされます。夫が会社員だった場合、妻の受給額の中心は遺族厚生年金と加算です。
遺族年金は、亡くなった月の翌月分から受け取れます。受け取るには要件があります。遺族厚生年金は、厚生年金に加入中の死亡などが対象です。
あわせて、保険料の納付要件を満たす必要があります。死亡月の前々月までの加入期間のうち、納付済みと免除の期間が3分の2以上なければなりません。
令和18年3月末までの死亡なら、65歳未満で直近1年に未納がなければ満たすという特例もあります。亡くなった方に生計を維持されていたことも条件で、原則として年収850万円未満が目安とされています。
受給額を決める給付は、次の3つです。
- 遺族基礎年金|子どもの人数に応じた受給額
- 遺族厚生年金|夫の報酬比例部分に応じた受給額
- 中高齢寡婦加算|40歳以上65歳未満の妻に上乗せされる金額
遺族基礎年金|子どもの人数に応じた受給額
遺族基礎年金を受け取れるのは、子のある配偶者か子です。ここでいう子は、18歳になった年度の3月31日までの未婚の子です。障害等級1級・2級の状態なら、20歳未満まで含まれます。
金額は、年847,300円に子の加算がつきます。加算は1人目と2人目が各243,800円、3人目以降が各81,300円です。
| 子の人数 | 年額 | 月額の目安 |
|---|---|---|
| 1人 | 1,091,100円 | 約90,925円 |
| 2人 | 1,334,900円 | 約111,242円 |
出典:日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」(2026年11月時点)。
子が独立している58歳の妻は、遺族基礎年金の対象になりません。再婚(内縁関係を含む)をすると、受給権はなくなります。
遺族厚生年金|夫の報酬比例部分に応じた受給額
遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。報酬比例部分は、平均標準報酬額と加入月数をもとに計算します。
平均標準報酬額とは、賞与を含めた月収の平均を、現在の価値に直した額です。加入が長く、給与が高かった人ほど、金額は大きくなります。厚生年金に加入中に亡くなった場合は、加入期間が25年未満でも300月とみなして計算する決まりです。
遺族厚生年金は、原則として生涯受け取れます。ただし、再婚などで受給権は消えます。現行制度では、夫が亡くなったときに30歳未満で子のない妻は、5年間の有期給付です。
中高齢寡婦加算|40歳以上65歳未満の妻に上乗せされる金額
中高齢寡婦加算は、年635,500円です。遺族厚生年金に、妻が40歳から65歳になるまで上乗せされます。次のどちらかに当てはまる妻が対象です。
- 夫の死亡時に40歳以上65歳未満で、生計を同じくする子がいない妻
- 遺族基礎年金を受け取っていた子のある妻が、子の年齢超過で受け取れなくなったとき
夫が老齢厚生年金を受け取る権利をもっていた場合などは、夫の厚生年金の加入期間が20年以上必要になります。
昭和31年4月1日以前生まれの妻には、65歳以降に経過的寡婦加算がつきます。58歳の妻の世代は対象外です。
2028年4月の制度見直しにも触れておきます。60歳以降に死別する場合と、2028年度に40歳以上になる女性は、原則5年の有期給付の対象になりません。一方、中高齢寡婦加算は、2028年4月1日以降に新たに受け取り始める人の額が、令和35年度まで25年かけて段階的に縮小されます。
すでに受け取っている加算の額は変わりません。この記事の金額は、現行制度の令和8年度のものです。
【家族構成別】遺族年金の受給額シミュレーション
夫の年金月額は20万円で固定します。変わるのは、18歳年度末までの子どもの有無です。子が18歳の年度末を迎えるまでの年数が、遺族基礎年金を受け取れる期間を左右します。
子どもの人数別に、次の3つのケースを比べます。
- 子どもがいない・独立している夫婦の場合
- 18歳年度末までの子どもが1人いる夫婦の場合
- 18歳年度末までの子どもが2人いる夫婦の場合
子どもがいない・独立している夫婦の場合
遺族基礎年金はなく、遺族厚生年金97,044円と中高齢寡婦加算52,958円を受け取ります。合計は月約15.0万円です。妻が64歳までの金額で、早見表の20万円のケースと一致します。
18歳年度末までの子どもが1人いる夫婦の場合
遺族基礎年金が約90,925円、遺族厚生年金が97,044円です。合計は月約18.8万円になります。
子がいる間は、中高齢寡婦加算を受け取れません。子が18歳の年度末に達して遺族基礎年金が終わったあと、妻が40歳以上65歳未満なら、加算が始まります。
18歳年度末までの子どもが2人いる夫婦の場合
遺族基礎年金が約111,242円、遺族厚生年金が97,044円で、合計は月約20.8万円です。子が3人以上なら、3人目からは1人につき年81,300円が加わります。
2028年4月(令和10年4月)以降は、遺族基礎年金の子の加算額が増えます。年約23.5万円から約28万円への引き上げです(厚生労働省の資料)。子がいる家庭の受給額は、今後上がる見通しです。
妻が65歳になったら遺族年金はいくらもらえる?
65歳で変わる点は2つあります。中高齢寡婦加算が終わること、自分の老齢年金が始まることです。遺族年金の一部が減っても、受け取る総額が下がるとは限りません。
65歳での変化は、次の3つに分けて整理します。
- 自分の老齢基礎年金と遺族厚生年金の併給
- 自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金の支給調整
- 中高齢寡婦加算の終了による受給額の変化
自分の老齢基礎年金と遺族厚生年金の併給
公的年金は、1人1年金が原則です。ただし、遺族厚生年金を受け取る人が65歳以上なら、自分の老齢基礎年金と遺族厚生年金をあわせて受け取れます。
専業主婦だった妻の例で見ます。夫の年金月額は20万円です。遺族厚生年金が97,044円、妻の老齢基礎年金が満額で70,608円となり、合計は月約16.8万円です。
64歳までの約15.0万円より、約1.8万円増えます。加算が終わっても、老齢基礎年金が始まるからです。
老齢基礎年金が満額になるのは、保険料を納めた期間が40年ある場合です。加入期間が足りなければ、その分だけ減ります。手元のねんきん定期便で確認できます。
自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金の支給調整
妻に老齢厚生年金がある場合は、調整が入る点に注意してください。65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利があれば、老齢厚生年金が全額支給されます。そのうえで、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額が支給停止になります。
遺族厚生年金の額は、次の2つのうち高いほうです。
- 夫の報酬比例部分の4分の3
- その額の3分の2と、妻自身の老齢厚生年金の2分の1を合計した額
日本年金機構の例で確かめます。夫の報酬比例部分の4分の3が60万円、妻の老齢厚生年金が50万円の場合、後者の計算は40万円と25万円の合計で65万円です。
こちらが高いので、遺族厚生年金は65万円と決まります。そこから老齢厚生年金の50万円分が支給停止になり、遺族厚生年金として実際に受け取るのは15万円です。
共働きで厚生年金に加入していた妻ほど、停止される額は大きくなります。それでも、老齢厚生年金だけの場合を下回ることはありません。
中高齢寡婦加算の終了による受給額の変化
65歳になった月から、中高齢寡婦加算の月約5.3万円は受け取れなくなります。
58歳の妻の世代は、経過的寡婦加算の対象外です。加算が終わった分を、別の加算が埋めてくれることもありません。夫の年金月額20万円で整理します。
| 妻の年齢 | 遺族厚生年金 | 中高齢寡婦加算 | 妻の老齢基礎年金 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 58〜64歳 | 97,044円 | 52,958円 | なし | 約15.0万円 |
| 65歳以降 | 97,044円 | なし | 70,608円 | 約16.8万円 |
出典:日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」をもとに試算(2026年11月時点)。妻の老齢基礎年金は満額の場合です。
原則として、66歳になる日までに遺族年金の受給権が生じると、老齢年金は繰り下げられません。繰下げを考える場合は、年金事務所に確認しておきましょう。
遺族年金だけで生活できる?不足額の目安と対策
遺族年金の額が分かったら、次は生活費との比較です。足りるかどうかは、自分の家計に当てはめないと分かりません。
生活費との比較と不足への備えを、次の2つに分けて確認します。
- 遺族年金と妻ひとりの生活費を比べた不足額の目安
- 不足分を補う方法
遺族年金と妻ひとりの生活費を比べた不足額の目安
目安になる統計があります。総務省統計局の家計調査(2025年)では、65歳以上の単身無職世帯の消費支出が月148,445円でした。実収入は131,456円、可処分所得は118,465円です。
夫の年金月額20万円のケースで比べます。遺族年金は月約15.0万円で、非課税のため額面と手取りがほぼ同じです。単身無職世帯の消費支出と、ほぼ並びます。
ただし、これは65歳以上の統計です。これに上乗せされる出費も、58歳の妻は見込んでおくのが現実的です。
不足額は、次の式で出せます。毎月の不足額 = 生活費 + 住宅ローンの返済額 + 保険料などの負担 − 遺族年金
仮に、生活費が月14.8万円、住宅ローンの返済が月6万円だとします。合計は20.8万円です。夫の年金月額20万円のケースで遺族年金が月約15.0万円なら、毎月5.8万円足りません。
ローンがあと5年残っていれば、不足額は5年間で約348万円になります。数字は仮定ですが、自分の家計で同じ式を計算すれば、必要な備えの大きさが見えてくるはずです。
住宅ローンが残っていれば、返済額がそのまま不足額に乗ります。ローンの契約に団体信用生命保険がついていれば、残債が保険で返済に充てられる場合があります。借入先の契約内容で確認してください。
夫の扶養から外れると、国民年金や国民健康保険の保険料を自分で払う場面が出てきます。金額は住んでいる市区町村と年金事務所で確認できます。
不足分を補う方法
足りない額が見えたら、手を打つ順番は3つです。
- 貯蓄と、夫の死亡保険金や退職金などの一時金を、取り崩す期間を決めて使います。期間は、住宅ローンの残りの年数や、妻が65歳になるまでの年数に合わせて区切ると計算しやすくなります。
- パートなどの収入で、毎月の不足を埋めるのも手です。
- 住宅ローンや保険の契約を見直し、毎月の固定費を下げます。
迷ったら、年金事務所の相談窓口やファイナンシャルプランナーに相談してください。
夫が入院中の場合は、公的な支援も確認できます。夫が協会けんぽの被保険者なら、業務外の病気やケガで連続3日休み、給与が出ない日が4日目以降にあれば、傷病手当金が出ます。
支給額は標準報酬月額の平均をもとにした日額の3分の2で、期間は通算1年6か月です。医療費が高額になった月は、自己負担限度額を超えた分が高額療養費で払い戻されます。
遺族年金のよくある質問
金額の次に気になるのは、自分が受け取れるのか、税金はかかるのか、いつまで続くのかの3点です。
よくある質問は、次の3つです。
- 遺族年金がもらえない・減額されるのはどんなとき?
- 遺族年金に税金はかかる?
- 遺族年金はいつまでもらえる?
遺族年金がもらえない・減額されるのはどんなとき?
遺族年金がもらえない主なケースは、次のとおりです。
- 保険料の納付要件を満たさない(加入期間の3分の2以上の納付・免除がない)
- 亡くなった方に生計を維持されていない(原則、年収850万円以上)
- 再婚した(内縁関係を含む)
年収が850万円以上でも、おおむね5年以内に850万円未満になる見込みがある場合は、受け取れます。
減額になるのは、65歳以上で自分の老齢厚生年金を受け取るときです。遺族厚生年金のうち老齢厚生年金に相当する額が、支給停止になります。
遺族年金に税金はかかる?
遺族年金は、所得税の課税対象になりません。日本年金機構も、遺族年金は非課税で、公的年金等の源泉徴収票は送られてこないと案内しています。
遺族年金はいつまでもらえる?
受給期間は、給付ごとに別々です。
遺族厚生年金は、再婚などで受給権がなくなるまで、原則として生涯受け取れます。中高齢寡婦加算は65歳までです。遺族基礎年金は、子が18歳の年度末(障害の状態なら20歳)になるまでです。
2028年4月からは、60歳未満で死別した場合に原則5年の有期給付になる見直しが入ります。60歳以降の死別と、2028年度に40歳以上になる女性は、対象外です。
まとめ|遺族年金の目安を知れば、不足分への備えを決められる
夫の年金月額が20万円で、妻が58歳・子なしなら、遺族年金は64歳まで月約15.0万円です。65歳以降は遺族厚生年金約9.7万円に、妻自身の老齢基礎年金が加わります。
自分の数字は、ねんきん定期便で確かめられます。夫の見込額と、妻自身の納付状況をまず確認しましょう。
そのうえで、月の生活費とローンの返済額を並べ、不足を計算します。足りない額が出たら、貯蓄の取り崩しとパート収入、保険の見直しから決めていきましょう。
