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退職金は一括と年金のどっちが得?税金・手取り額の違いやおすすめの受け取り方を解説

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「退職金は、一括で受け取るべきか、年金で分けるべきか」「どちらが手取りで得なのか、会社に聞いても分からない」。定年が近づくと、こうした迷いが出てきます。

先に答えを書きます。退職金が退職所得控除の範囲に収まるなら、税金と社会保険料の面では、一括(一時金)が有利になりやすいです。

ただし、受取総額、会社年金の利率、再雇用の給与との合算で、結論は変わりえます。決め手は、自分の会社の制度で何が選べるかです。

本記事では、一括・年金・併用の違いを、税金・社会保険料・受取総額の3つの軸で比べます。退職金2,000万円の例で、手取りの差も試算しました。決める前に会社へ確認する項目は、リストにまとめてあります。

目次

退職金の受け取り方は一括・年金・併用の3種類

退職金の受け取り方は、一括、年金、併用の3つです。どれを選べるかは、会社の制度で決まります。

退職金の制度は、大きく2つに分かれます。退職一時金制度は、退職時にまとまった金額を支払う仕組みです。企業年金には2種類あります。

確定給付企業年金(DB)は、給付額があらかじめ決まっている制度です。企業型確定拠出年金(企業型DC)は、掛金と運用成績で給付額が変わる制度です。

DBは、規約に定めがあれば、年金の全部または一部を一時金で受け取れます。厚生年金は国の公的年金で、会社の退職金や企業年金とは別の制度です。

引用:厚生労働省 私的年金制度の概要、確定給付企業年金法第38条(2026年11月時点)

受け取り方は、次の3つです。

  1. 一時金として一括で受け取る
  2. 年金形式で分割して受け取る
  3. 一時金と年金を併用して受け取る

それぞれの特徴と注意点を確認します。

一時金として一括で受け取る

一括は、退職時にまとまった金額を一度に受け取る方法です。税法上は退職所得にあたり、退職所得控除と2分の1の計算が使えます。控除額の範囲に収まれば、税金はかかりません。

手元にまとまった資金が残るため、使い道は自分で決められます。再雇用で給与が下がる期間の補填や、ローンの返済にも使えます。

一方で、使い方には注意が必要です。計画なく使うと、老後の資金は早く減りかねません。

運用に回すなら、元本割れも織り込む必要があります。年金のような定期収入にはならない点も、一括の特徴です。

年金形式で分割して受け取る

年金形式は、退職金を一定の期間に分けて、定期的に受け取る方法です。受取期間は、10年や20年の有期か、終身かのどちらかで、会社の制度が決めます。定期収入になるので、生活費の補填に使いやすい方法です。

受け取った年金は雑所得になり、給与や他の年金と合算して課税されます。受取期間が長い分、会社の業績や制度変更の影響を受ける点にも目を向けたいところです。

受取期間中に本人が亡くなった場合の扱いは、規約によって異なります。ここは人事に確認する項目です。

一時金と年金を併用して受け取る

併用は、退職金の一部を一括で、残りを年金で受け取る方法です。一時金部分は退職所得、年金部分は雑所得として扱われます。それぞれの控除が使えるので、手元の資金と定期収入を、両方確保しやすい方法です。

併用できるか、割合を選べるかは、会社の制度で決まります。割合に制限がある制度もあります。

一括と年金の中間にあたるため、税や保険料の影響も中間になりやすいです。年金に回す額が小さいほど、給与との合算による増税は小さくなります。

退職金は一括と年金のどっちが得?3つの比較ポイント

どっちが得かは、税金、社会保険料、受取総額の3つで決まります。控除額の範囲に収まる退職金なら、税と保険料の面では一括が有利になりやすいです。年金は、利率しだいで受取総額が増えます。

ただし、再雇用の給与と合算されると、税と保険料の負担も増えます。まず、違いを表で確認しましょう。

比較軸一括(一時金)年金形式併用
税の区分退職所得雑所得(公的年金等)一時金分は退職所得、年金分は雑所得
使える控除退職所得控除と2分の1の計算公的年金等控除それぞれの控除
他の所得との関係他の所得と分けて計算(分離課税)給与や他の年金と合算年金分のみ合算
国保料への影響算定に含めない自治体がある雑所得として算定に含まれる年金分のみ
受取総額受け取った額がそのまま総額会社の利率しだいで増減年金分のみ

引用:国税庁 No.1420・No.1600、川崎市を基に作成(2026年11月時点)

比較のポイントは、次の3つです。

  1. 税金の違い|退職所得控除と公的年金等控除
  2. 社会保険料の違い|国民健康保険料や介護保険料への影響
  3. 受取総額の違い|年金の給付利率や受給期間による差

税金、社会保険料、受取総額の順に、違いを確認します。

税金の違い|退職所得控除と公的年金等控除

一括は退職所得、年金は雑所得。ここが税の出発点です。

一括なら、退職所得控除と2分の1の計算が使えます。式は「(退職金−退職所得控除額)×1/2」です。

控除額は、勤続20年超なら800万円+70万円×(勤続年数−20年)です。勤続38年なら2,060万円。退職所得は、給与など他の所得と分けて計算する分離課税です。

年金形式は雑所得で、公的年金等控除を使います。会社から支払われる年金や、確定給付企業年金法に基づく年金は、公的年金等に含まれます。一括との大きな差は、給与や他の年金と合算される点です。

再雇用で給与がある時期に年金を受け取れば、その分だけ課税される所得が増えます。年金だから税が軽い、とは限りません。制度によって扱いが異なる場合もあるため、会社への確認が先です。

引用:国税庁 No.1420・No.1600(2026年11月時点)

社会保険料の違い|国民健康保険料や介護保険料への影響

保険料への入り方も違います。国保の所得割は、自治体によって算定の仕方が異なります。

川崎市と東京都中央区では、退職所得は保険料の計算に使われません。年金は雑所得にあたり、算定に使う所得に入ります。

介護保険料(65歳以上)についても、江東区は、一括で受け取って分離課税になる退職金は算定に影響しないと案内しています。年金として受け取る分は、後の算定で加算されるケースがあるとのことです。

再雇用で勤務先の健康保険に入っている間は、保険料は給与(標準報酬月額)が基準です。退職手当は、原則として標準報酬月額の対象となる報酬にあたりません。

ただし、毎月の給与や賞与に上乗せして前払いする退職金は、報酬として扱われます。影響が出やすいのは、再雇用を終えて国保に移る時期以降です。

算定の方法は、市区町村ごとに違います。国保・介護保険の窓口で、事前に確かめてください。

引用:川崎市、中央区、江東区、厚生労働省の各ページ(2026年11月時点)

受取総額の違い|年金の給付利率や受給期間による差

年金形式の受取総額は、利率と受取期間で変わります。原資に利息がつく設計なら、総額は一括を上回る場合があります。

2,000万円を年2%で20年かけて受け取る計算なら、年に約122万円、総額は約2,446万円です。利率0%なら、年100万円で、総額は2,000万円のままです。

2%は計算例の仮定にすぎません。実際の利率は、会社の規約で決まります。確定給付企業年金の一時金や年金の換算に使う利率は、規約を見ないと分かりません。

総額が増えても、手取りが増えるとは限りません。年金は雑所得なので、税金と保険料の対象です。

さらに、20年という長さそのものがリスクです。会社の業績、制度の変更、物価の上昇が、受け取る価値を左右します。

【シミュレーション】退職金を一括・年金・併用で受け取る場合の手取り額の違い

退職金2,000万円で、一括・年金・併用の手取りを試算します。前提は次のとおりです。

項目前提
退職金の総額2,000万円(退職一時金と企業年金の合計)
勤続年数38年(退職所得控除額は2,060万円)
60〜65歳再雇用、年収400万円
年金形式20年の有期(60〜80歳、年100万円、利率は考慮しない)
併用一時金1,000万円+年金1,000万円(年50万円)

65歳以降は、公的年金の額や扶養の状況で結果が変わります。数値で示すのは60〜64歳までで、65歳以降は仕組みで説明します。数字は、国税庁の資料を基にした試算です。

試算する受け取り方は、次の3つです。

  1. 一時金で全額受け取る場合
  2. 年金形式で全額受け取る場合
  3. 一時金と年金を併用する場合

それぞれ、税と手取りがどう変わるかを確認します。

一時金で全額受け取る場合

2,000万円を一括で受け取る場合を見ましょう。勤続38年の退職所得控除は2,060万円で、退職金が控除額以内に収まるため、課税退職所得金額はゼロです。

項目金額
退職金20,000,000円
退職所得控除額20,600,000円
課税退職所得金額0円
所得税等・住民税0円
手取り20,000,000円

引用:国税庁 No.1420を基に計算(2026年11月時点)

注意したいのは、申告書です。「退職所得の受給に関する申告書」を出していないと、2,000万円の20.42%、408万4,000円が源泉徴収されます。確定申告で精算できますが、戻るまでの間、手元の資金は減ります。

勤続年数のずれは、小さくありません。1年違うだけで、控除額は70万円動きます。入社日と退職日の数え方は、人事に確かめておきましょう。

国保の算定に、退職所得は含まれません(自治体の案内)。

年金形式で全額受け取る場合

2,000万円を20年の有期年金にすると、年100万円が60歳から80歳まで続きます。

60〜64歳は、再雇用の給与に年金が上乗せされます。65歳未満の公的年金等控除は、年金収入が60万円超130万円以下なら一律60万円です。年100万円なら、雑所得は40万円です。

この40万円により、所得税と住民税は年に約6万円増えます。5年で約30万円です。

試算の前提は、給与収入400万円、社会保険料控除60万円で、配偶者控除などはありません。実際の額は、家族構成や他の控除しだいです。

65歳以降は、公的年金に年金が上乗せされます。公的年金等控除は、公的年金等の収入の合計に対して適用されます。65歳以上は、収入が110万円超330万円以下なら一律110万円です。

公的年金がすでに110万円を上回っていれば、企業年金の100万円は、ほぼそのまま課税対象に加わります。国保・介護保険料の算定にも入ります。

増える額は、公的年金の見込み額で変わります。ねんきん定期便やねんきんネットで、自分の見込み額を確認しておきましょう。

引用:国税庁(No.1600、高齢者と税)を基に試算(2026年11月)

一時金と年金を併用する場合

一時金1,000万円と年金1,000万円(年50万円)を組み合わせます。一時金の1,000万円は、控除額2,060万円以内に収まり、税金はゼロです。年金の年50万円は、65歳未満の公的年金等控除の範囲に収まります(年金収入が60万円以下なら、雑所得は0円)。

60〜64歳は雑所得が出ないので、再雇用の給与と合算しても、年金分の増税はほぼありません。65歳以降は、公的年金に年50万円が上乗せされます。年金のみの場合の、半分の額です。

3つの受け取り方を並べます。

項目一括年金(20年)併用
一時金の税0円なし0円
60〜64歳の年金による税の増分(年)なし約6万円ほぼ0円
65歳以降の年金なし公的年金に年100万円を上乗せ公的年金に年50万円を上乗せ
手元の資金2,000万円毎年100万円1,000万円+毎年50万円

引用:国税庁 No.1420・No.1600を基に試算(2026年11月時点)

この前提では、税と保険料の負担は、一括が最も小さく、年金が最も大きい結果です。併用は、その中間に入ります。ただし、受取総額と、定期収入の安心感は別の軸です。

退職金が控除額を超える場合は、結論が変わります。超えた部分を年金にする併用は、税の面でも選択肢です。

退職金を一括・年金のどちらで受け取るか決める4つの判断ポイント

受け取り方は、自分の状況に当てはめて決めるのが近道です。再雇用で給与がある前提で、目安を表にまとめました。

状況向きやすい受け取り方理由
退職金が控除額以内で、手元資金を重視一括税が0円になり、保険料への影響も小さい
再雇用の給与があり、定期収入も欲しい併用(年金側は小さめ)給与との合算を抑えつつ、定期収入を確保できる
会社年金の利率が高い、終身で受け取れる年金(制度の条件を確認)受取総額や長生きへの備えになる
退職金が控除額を超える併用(超える部分を年金)超えた部分の課税を抑えられる場合がある

表は判断の目安であり、個別の試算の代わりにはなりません。次の4点を、順に確認していきましょう。

確認したいポイントは、次の4つです。

  1. 退職金と企業年金を両方受け取れるか確認する
  2. iDeCo・企業型DCとの受け取り時期を確認する
  3. 退職後の収入と生活費のバランスを確認する
  4. 住宅ローンの返済や資産運用などの資金計画を確認する

会社の制度から資金計画まで、順に確認します。

退職金と企業年金を両方受け取れるか確認する

両方を受け取れるかは、会社の制度で決まります。退職一時金制度と企業年金の両方を持つ会社もあります。

最初に、退職金規程と企業年金の規約を読んでください。人事や企業年金の担当に、次の7点を聞いておきましょう。

  • 制度の種類(退職一時金、DB、企業型DC、併用)
  • 年金・一時金・併用の選択可否と、割合の制限
  • 年金の受取期間(有期か終身か)と、受取開始時期
  • 給付利率(固定か、運用しだいか)
  • 保証期間と、本人が亡くなった場合の扱い
  • 選択の期限と、後から変更できるか
  • 申告書の提出時期

とくに、亡くなった場合の扱いは、妻の生活に直結します。保証期間があるか、残りが遺族に支払われるかは、規約で違います。

相談先は、まず会社の人事や企業年金の担当です。制度を最も正確に知っているのは、運営側です。

引用:厚生労働省 私的年金制度の概要(2026年11月時点)

iDeCo・企業型DCとの受け取り時期を確認する

iDeCoや企業型DCを一時金で受け取ると、退職所得として扱われます。会社の退職金と受け取る時期が近いと、勤続期間が重なる分の退職所得控除が調整されます。

確定拠出年金の一時金を先に受け取った場合を考えます。その一時金は、前年以前9年内に受け取る会社の退職金の調整対象です。

対象は、令和8年1月1日以後に受けた一時金です。それ以前の一時金は、従来どおり前年以前4年内で判定します。

会社の退職金を先に受け取った場合は、前年以前19年内の退職金が、本年の確定拠出年金の一時金の調整対象です。「10年ルール」と呼ばれることもありますが、国税庁の表記は「9年内」です。

受け取る順番と間隔で、使える控除が変わります。加入しているなら、受け取る年をずらす設計が効く場合があります。年金で受け取る場合は、公的年金等として、別の計算です。

引用:国税庁 No.2735(2026年11月時点)

退職後の収入と生活費のバランスを確認する

60〜65歳の収支から考えると決めやすいです。

再雇用で給与が下がると、毎月の収支が赤字になることがあります。不足分は、一括で受け取った退職金から取り崩す方法と、年金で毎年受け取る方法のどちらかで補います。65歳以降は公的年金が加わるため、必要な補填の額は一定ではありません。

確認の手順は3つです。

  • 再雇用後の手取りと、毎月の生活費を書き出す
  • ねんきん定期便で、65歳以降の公的年金の見込み額を確かめる
  • 不足額を累計して、手元に置いておく資金を決める

医療費や介護費のような突発の出費は、手元の資金で備える方が使いやすいです。手元の安心感と定期収入の安心感、どちらも捨てがたいなら、併用が選択肢です。

住宅ローンの返済や資産運用などの資金計画を確認する

退職金の使い道は、住宅ローンの返済と、資産運用に大きく分かれます。使い道が決まれば、受け取り方は絞られます。

ローンの残高が大きく、退職金で返済したいなら、一括か併用の一時金側が必要です。年金では、まとまった返済資金を一度に用意できません。毎年の生活費の補填が目的なら、年金側が向いています。

運用を考える場合も、一括で受け取ってから自分で行う形が中心です。元本割れの可能性があるため、受け取った資金を一度に投資へ回すのは避けましょう。

受け取り直後は、金融機関から商品の提案を受けることもあります。理解できない商品には手を出さず、急いで決めないことです。

まとめ|退職金は一括・年金の手取り額と老後の資金計画を比べれば、自分に合う受け取り方が見える

退職金の受け取り方は、一括、年金、併用の3つです。選べる範囲は、会社の制度で決まります。比べる軸は、税金、社会保険料、受取総額の3つです。

退職金が控除額以内に収まる前提なら、一括の税は0円です。年金は、再雇用の給与と合算されるため、60〜64歳は税の増分が出ます。

併用で年金側を小さくすれば、その増分を抑えられます。控除額を超える場合は、結論が変わる点に注意が必要です。決める前にやることは、4つです。

  1. 会社の規程と規約で、選べる方法を確認する
  2. iDeCoや企業型DCがあれば、受け取る年と順番を整理する
  3. 再雇用後の収支を書き出す
  4. 退職金の使い道を決める

この順に進めれば、自分の場合の答えが見えてきます。

最終的な税額や保険料は、家族構成や他の所得で変わります。個別の判断は、税務署や税理士、年金事務所、会社の人事に確認してください。

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この記事を書いた人

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種資格保有。金融・保険・年金・税金・不動産分野を中心に、これまで1,000本以上の記事を執筆。金融記事の監修や編集にも携わり、公的機関の資料や一次情報をもとに、専門的な制度や仕組みをわかりやすく解説しています。

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