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30代の老後資金はいくら必要?FP1級が準備の手順と賢い貯め方を解説

30 代 老後 資金

「老後なんてまだ先の話」と思いながら、気づけば30代になっていた…。

そんな方も多いのではないでしょうか。

ただ、老後資金は準備を始めるタイミングが早いほど、毎月の積立負担が小さくなるのは確かなことです。今から始めれば30年以上の運用期間が残っており、少額からでも着実に積み上げられる可能性があります。

この記事では、老後に必要な資金の目安から自分の不足額の計算方法、NISAやiDeCoを使った具体的な貯め方まで、30代が今日から行動できる内容をまとめました。まずは自分の「数字」を把握するところから始めてみてください。

目次

30代の老後資金はいくら必要か

老後に必要な資金は、世帯の状況や生活水準によって大きく異なります。ここでは、公的データをもとにした具体的な目安を世帯タイプ別に確認していきましょう。

最低限の生活に必要な老後資金

老後に最低限必要な生活費の目安を、公的データで確認しておきましょう。

生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査」によると、夫婦2人が老後に最低限必要な生活費は月平均23.9万円とされています。単身世帯については、総務省「家計調査」(2024年)から、65歳以上の無職単身世帯の消費支出は月14.9万円、税・社会保険料を含めた支出合計は約16.2万円となっており、実収入との差額(毎月の不足額)は約3万円です。

老後期間を65〜95歳の30年間と仮定すると、単身の自助努力で必要な不足補填額は概算で約1,080万円となります。

世帯タイプ月額消費支出月額不足額(目安)30年間の不足総額(概算)
単身(65歳以上・無職)約14.9万円約3万円約1,080万円
夫婦(65歳以上・無職)約26.4万円約4.2万円約1,512万円

※出典:総務省「家計調査」2024年、生命保険文化センター「2025年度 生活保障に関する調査」

ただし、年金受給額・生活水準・物価変動によって実際に必要な金額は大きく変わります。上記はあくまで目安として捉えてください。

また、この支出には医療・介護費が十分に含まれていない点も見落とさないようにしましょう。要介護状態になった場合の費用(月数万〜十数万円)は別途見込む必要があります。

ゆとりある生活に必要な老後資金

旅行や趣味など、ゆとりを持って老後を過ごしたい場合の目安も確認しておきましょう。

生命保険文化センター「2025年度 生活保障に関する調査」によると、ゆとりある老後生活に必要な月額は平均39.1万円とされています。

項目月額
最低限の生活費約23.9万円
ゆとりのための上乗せ額約15.2万円
ゆとりある老後生活費合計約39.1万円

※出典:生命保険文化センター「2025年度 生活保障に関する調査(速報版)」

上乗せ分の使途として挙げられるのは、旅行・レジャー、趣味・教養、孫への贈り物などです。夫婦2人で30年間をゆとり水準で生活した場合の支出総額は概算で約1億4,000万円となりますが、公的年金でまかなえる分を除いた差額が実質の準備目標額となります。

「1,800万円のNISA枠を埋めること」を目的にするよりも、「いつ・何に使うか」を先に決めてから逆算して積立額を設定する順番の方が、計画として長続きしやすいと私は考えています。

独身女性に必要な老後資金

独身女性の老後資金を試算するうえでは、長寿リスクと就労継続の難しさという2つの観点が影響します。

厚生労働省のデータによると、日本人女性の平均寿命は87.13歳(2025年時点)であり、男性より約6年長い状況です。65歳以上の単身無職女性の月額生活費平均は約13.8万円、公的年金の平均受給額は月10.9万円(厚生年金を含む場合)で、毎月約2.9万円の不足が生じる計算となります。

条件老後不足補填額(概算)
厚生年金受給・単身女性約1,336万円〜
国民年金のみ・単身女性約2,668万円〜

※個人の年金加入歴・生活水準・寿命により大きく異なります。あくまで目安です。

女性は出産・育児などでキャリアが中断しやすく、厚生年金の加入期間が短くなりがちな点も考慮が必要です。長寿リスクが高い分、「老後資金が尽きるリスク」も相対的に高くなるため、iDeCoやNISAを活用した早めの準備がとくに有効です。

一人暮らしに必要な老後資金

総務省「家計調査」(2024年)によると、65歳以上の単身無職世帯の消費支出は月平均14.9万円、税・社会保険料等の非消費支出を含めると月約16.2万円が必要となります。

一人暮らしの場合、光熱費・通信費・日用品費などの固定費が夫婦世帯と大きく変わらず「割高感」が生じやすい点が特徴的です。65〜95歳の30年間の支出総額は概算で約5,800万円となりますが、年金収入でまかなえる部分を除いた差額が実質の準備目標額となります。

なお、後述するように、賃貸で暮らし続ける場合は住居費がさらに上乗せされるため、別途確認が必要です。

賃貸暮らしに必要な老後資金

老後も賃貸住まいを続ける場合、住居費の負担が老後資金の必要額を大きく押し上げます。

家計調査の単身世帯平均(住居費月約1.2万円)は持ち家世帯の比率が高い統計に基づくため、賃貸継続の場合は実際の家賃分が上乗せされます。

条件老後30年間の住居費(概算)
持ち家(ローン完済後)固定資産税・修繕費のみ(月1〜3万円程度)
賃貸(月5万円)約1,800万円
賃貸(月8万円)約2,880万円

※数値はあくまで概算。個人の住居環境・地域・築年数等で異なります。

また、高齢になると入居審査が通りにくくなるリスクや、住み替えの選択肢が狭まる可能性もある点を早めに把握しておくことが安心につながります。UR賃貸・公営住宅・サービス付き高齢者向け住宅などの選択肢についても、30代のうちから知識として持っておくとよいでしょう。

一方で、住宅ローンや固定資産税・大規模修繕費がない点は賃貸のメリットであり、一概に「どちらが得か」とは言い切れません。賃貸か持ち家かの判断は、住居費の多寡だけでなく「流動性(引っ越しやすさ)」「ライフスタイルの変化への対応力」も含めて考えることをおすすめします。

30代で老後資金を考える前に確認したいお金の現在地

老後資金の準備を始める前に、まず「今の自分のお金の状況」を把握することが重要です。ここでは、事前に確認しておきたい5つの数字を順に見ていきましょう。

現在の貯蓄額

貯蓄額の確認は、銀行預金残高・証券口座の評価額・保険の解約返戻金・企業型DCの積立残高をすべて合算した「純資産ベース」で把握することが重要です。

世帯タイプ平均値中央値金融資産非保有率
30代単身世帯約912万円約300万円約32%
30代二人以上世帯約599万円約130万円約28%

※出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(2025年)

平均値と中央値に大きな差があるのは、一部の高額保有者が平均値を引き上げているためです。「実態に近い数字」として参照すべきは中央値のほうです。「平均に届かないから遅れている」と焦る必要はなく、まず自分のポジションを把握する出発点として捉えましょう。

NISAやiDeCoを始める前に、まず現在の純資産を「紙に書き出す」ことが最初のステップだと私は考えています。数字を見える化するだけで行動が変わることが多いです。

毎月の貯蓄額

毎月の貯蓄額を正確に把握するには、「手取り月収 − 実際の支出合計 = 実質貯蓄額」を計算することが基本です。家計簿アプリや銀行口座の残高変化を3ヶ月分確認すると、実態に近い数字が把握しやすくなります。

一般的に「収入の2割を貯蓄に回す」が目安として提示されることが多いですが、生活水準・家族構成・住宅費によって最適な率は異なります。

毎月収入の10%を自動的に別口座へ先取り移動する仕組みを作ることが、老後資金づくりの最初の一手としてとくに効果的です。金額の多寡よりも「続けられる仕組み」の有無が、長期的な差を生みます。

毎月の生活費

老後の生活費を試算する際、「現在の生活費の70〜80%が老後の目安」という考え方が参考にされることが多いです。住居費・教育費・交際費が減る一方、医療費が増加するためです。

ただしこの割合はあくまで一般論であり、ライフスタイルや健康状態によって大きく変わります。家計簿アプリを3ヶ月間使って実態を把握するのがおすすめです。

現在の生活費を把握せずに老後必要額を試算すると、ズレた数字で計画を立てることになりかねないため、このステップは手間でも実施する価値があります。

退職金の見込額

退職金の有無・金額は企業によって大きく異なります。まずは就業規則または人事部に確認することが不可欠です。

企業規模大卒・定年退職の退職金平均額(目安)
大企業約2,000万円超
中小企業(勤続35年以上)約1,000万円前後
退職金制度なし0円

※出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」、東京都産業労働局「令和6年版」

企業型DCへの移行で「退職金」の概念が変わっている企業も増えており、DC残高を退職金の代替として扱うケースも少なくありません。退職金を「老後資金の柱」として計画している場合、制度変更や会社の業績悪化によって想定外に減額される可能性もあるため、過度に頼りすぎない設計をおすすめします。

年金の見込額

日本年金機構から毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」で年金記録を確認できます。ただし30代(50歳未満)の場合、定期便には将来の年金見込額が記載されておらず、「ねんきんネット」での試算が必要です。

年金の種類月額の目安
老齢基礎年金(国民年金)満額約69,308円(2025年度)
厚生年金の平均受給額約145,865円
国民年金のみの平均受給額約55,809円

※出典:厚生労働省(2025年度)

「年金は当てにならない」という声もよく聞きますが、国がGPIFで年金積立金を運用していることもあり、完全破綻よりも「給付水準を下げながら維持する」形が現実的なシナリオだと私は見ています。それでも自助努力が必要であることには変わりありません。

また、繰り下げ受給(最大75歳)を選択すると、1ヶ月あたり0.7%増額、70歳まで繰り下げると42%増となります。「確実に42%増える運用」はなかなかないため、手元資金に余裕があれば積極的に検討する価値があります。

30代から老後資金を準備する具体的な手順

老後資金の準備は、以下の5ステップで進めていくと整理しやすくなります。各ステップを順番に踏むことで、無理のない計画が立てやすくなります。 それぞれ詳しく見ていきましょう。

STEP1|老後の生活費を見積もる

老後の生活費試算の起点は「現在の月々の生活費」です。ここから、老後に増減する費目を調整していきます。

  • 減る費目:住宅ローン返済・教育費・交通費・交際費・被服費
  • 増える費目:医療費・介護関連費・趣味・旅行(ゆとりを求める場合)

「現在の生活費の70〜80%」を老後の月額として仮置きして、賃貸継続かどうか・持病の有無・希望するライフスタイルを加味して調整しましょう。「何をしたいか」から逆算する方が、モチベーション維持にも長続きしやすいと私は考えています。

STEP2|年金と退職金で足りる金額を確認する

基本の計算式は次のとおりです。

基本の計算式:(年金月額 × 12ヶ月 × 老後年数)+ 退職金見込額 = 確保できる老後収入総額

これと「老後の支出総額(月額生活費 × 12 × 老後年数)」を比較して、差額がマイナスなら自助努力で準備すべき不足額となります。

計算例(参考)として、年金月15万円・65歳から90歳の25年間・退職金1,000万円の場合を見てみましょう。収入総額は15万×12×25+1,000万=約5,500万円、月20万円の生活費なら支出総額は6,000万円となり、不足額は約500万円となります。

退職金を「一括で受け取る」か「年金形式で受け取る」かで税負担が変わるため、受取方法の選択は事前にFPや税理士に確認することをおすすめします。

STEP3|不足する老後資金を計算する

老後の支出総額 − 年金・退職金等の収入総額 = 自助努力で準備すべき不足額

この不足額に、医療・介護費の予備費(目安:300〜500万円)とインフレ分の上乗せを加算すると、より実態に近い目標額になります。

現在の貯蓄額をこの数字から差し引いた残額が「これから積み立てるべき金額」です。不足額が大きくても焦る必要はありません。30代スタートの場合、複利運用を活かせる期間が30年以上残っているため、月々の積立額に分解すると現実的な数字になることが多いです。

STEP4|毎月の積立額を決める

不足額を月々の積立額に換算する際は、運用益を加味したシミュレーションが現実的な計画につながります。

月額積立運用期間年利3%の場合の目安到達額
3万円30年約1,749万円
5万円30年約2,894万円
3万円20年約985万円
5万円20年約1,642万円

※複利計算の概算。運用利回りは保証されるものではありません。

生活費を圧迫しない範囲で「続けられる積立額」を設定することが最も重要です。積立額を決める前に、生活防衛資金(生活費3〜6ヶ月分)が手元に確保されているかを必ず確認しましょう。ここを飛ばして投資に回すと、相場急落時に強制売却せざるを得なくなるリスクがあります。

STEP5|定期的に目標額を見直す

老後資金の目標額は一度設定して終わりではなく、ライフイベントごとに見直すことが重要です。 主な見直しタイミングは以下のとおりです。

  • 結婚・出産・住宅購入
  • 転職・収入の大幅な変化
  • NISA・iDeCoの制度改正

年に1回、ねんきんネットで年金見込額を確認しながら、老後の収入と支出のギャップが縮まっているかをチェックする習慣を持ちましょう。「計画通りに進んでいるかの健康診断」として捉えると継続しやすくなります。

30代に向いている老後資金の貯め方

老後資金を効率よく積み上げるには、自分の状況に合った手段を選ぶことが大切です。ここでは、30代に向いている代表的な貯め方を5つ紹介します。それぞれの特徴と活用ポイントを確認していきましょう。

先取り貯蓄

先取り貯蓄とは、給与入金後すぐに一定額を別口座に自動移動し、残ったお金で生活をやりくりする習慣のことです。「残ったお金を貯める」方式では支出が増えやすく貯まりにくいため、自動積立設定で「強制的に貯まる仕組み」を作ることが継続のカギとなります。

お金の勉強を始める前に、まず「生活防衛資金を確保すること」と「毎月収入の10%を先取り貯金すること」の2ステップを実践することが最重要だと私は考えています。NISAやiDeCoなどの制度活用はその土台が整ってから考える順番が、長続きしやすいです。

NISA

新NISAは「つみたて投資枠(年120万円)」と「成長投資枠(年240万円)」の2枠があり、生涯投資枠は合計1,800万円です。運用益・配当はすべて非課税となります。

30代が老後資金として活用する場合、つみたて投資枠で全世界株式型や国内・海外バランス型のインデックスファンドを長期積立するのが基本的なアプローチです。30代のNISA利用者の7割以上が運用益プラスという結果も報告されており(2026年調査)、長期積立による複利効果が機能している事例が増えています。

老後の取り崩し方法としては「定率取り崩し(例:年4%)」が有力な選択肢の一つです。定額ではなく定率で取り崩すことで元本を減らさずに生活できるため、いわば「自分で作った年金」として機能させることができます。

「オルカン一択・S&P500一択」という意見もよく見聞きしますが、ポートフォリオ理論の観点から、国内株式・国内債券・海外債券もバランスよく組み込む分散の視点も持っておく方が望ましいと私は考えています。どの商品を選ぶかは最終的にはご自身の判断となりますが、一つの商品に集中しすぎるリスクは意識しておきましょう。

iDeCo

iDeCo(個人型確定拠出年金)は掛け金が全額所得控除になる点が最大のメリットで、運用益も非課税となります。

加入区分掛金上限(月額)
会社員(企業年金なし)2.3万円
会社員(企業年金あり)2万円(2024年12月改正後)
個人事業主・フリーランス6.8万円

※2026年6月時点。2027年1月から拠出限度額引き上げ予定

年収500万円の会社員が月2万円積み立てた場合の節税効果は年間約4.8万円(所得税・住民税合算)です。30歳から60歳まで30年間・年利3%で運用すると約1,165万円の資産形成が期待できるとの試算もあります。

最大のデメリットは「60歳まで引き出せない」点です。生活防衛資金が不十分な状態でのiDeCo加入は資金拘束リスクがあります。とくに個人事業主・フリーランスは掛金上限が月6.8万円と大きく、所得控除効果が高いため、手元流動性が確保できているなら積極的に活用してほしい制度だと私は考えています。

企業型DC

企業型DC(確定拠出年金)は企業が掛金を拠出し、従業員が自ら運用指図を行う制度です。運用次第で将来の受取額が変わるため、元本保証型に偏りすぎると運用効果が低くなるリスクがあります。 まずは自分の運用状況を確認しましょう。

2026年4月からは、企業型DCのマッチング拠出(従業員が上乗せ拠出できる制度)の制限が撤廃される予定です。これにより自助努力での積立枠が拡大する見込みとなっています(出典:freee「2024年12月のiDeCo改正」)。

また、転職時には企業型DCの残高を新しい会社のDCまたはiDeCoに移管(ポータビリティ手続き)する必要があります。手続きを忘れると運用機会を失うリスクがあるため注意しましょう。

定期預金

定期預金は老後資金づくりにおける「守りの資産」として位置づけられます。元本保証(ペイオフ制度により1金融機関あたり1,000万円+利息まで保護)であり、近い将来に使う予定のある資金や生活防衛資金の置き場所として適しています。

2026年6月時点で、メガバンクの1年物定期預金の金利は年0.40%前後、高金利ネット銀行では年1.00%程度まで上昇しています。ただし、長期的な資産形成(30年スパン)ではインフレに負けるリスクがあるため、NISAやiDeCoとの役割分担が重要です。

保険で貯蓄するアプローチよりも、守りの資産は定期預金・元本保証商品で、増やす資産はNISA・iDeCoのインデックス投資で分けるやり方の方が合理的だと私は考えています。貯蓄型保険はコスト(手数料)が高く、インフレを考慮すると実質的なリターンが低くなりがちです。

30代が老後資金づくりで注意したいこと

老後資金を積み上げていく過程では、陥りやすい落とし穴がいくつかあります。ここでは、30代が特に気をつけたい5つの注意点を取り上げます。それぞれ確認していきましょう。

生活防衛資金を残さず投資する

生活防衛資金とは、失業・病気・災害など不測の事態に備えた「生活費3〜6ヶ月分の現金」です。この資金が不足している状態で投資を始めると、相場急落と「お金が必要な時期」が重なった際に、含み損のまま資産を強制売却せざるを得なくなるリスクがあります。

「早く始めるほど得」は正しいですが、生活防衛資金が確保できていない人は投資より貯金が先だと私は考えます。暴落と出費が重なったときに強制売却が発生すると、長期投資の恩恵が受けられなくなります。iDeCoはNISAよりさらに資金拘束が強いため、手元現金が十分でない状態でiDeCoへの拠出を急ぐことも同様のリスクをはらんでいます。

老後資金と近い将来の支出を混同する

老後資金・子どもの教育費・住宅購入頭金・車購入費などは「使うタイミング」が異なるため、同じ口座・同じ運用方法で管理することにはリスクがあります。

資金の3層管理を意識しましょう。

①生活防衛資金:すぐ使える現金(普通預金) ②近中期の目的別資金:5〜10年以内に使う教育費・住宅資金など(元本保証・低リスク) ③長期の老後資金:30年以上先(株式比率を高めた運用が許容される)

とくに「近い将来使う予定の資金」を株式型ファンドで運用していると、暴落のタイミングで取り崩しが必要になり損失が確定するリスクがあります。目的を先に決めてから積立額を逆算する順番を守ることが、長期計画を崩さないコツです。

保険料を払いすぎる

複数の保険に加入している場合、保障が重複していることがあり、不要な保険料が老後資金の積立余力を削っている可能性があります。保険見直しの基本は「何に備えるために入っているか」を目的ベースで確認することです。

状況向いている保険見直しの余地がある保険
子どもがいる・配偶者がいる生命保険(死亡保障)不要な特約・貯蓄型保険
フリーランス・個人事業主収入保障保険重複した医療保険
独身・扶養家族なし収入保障保険のみで十分なケースも高額な生命保険

「保険は掛け捨て、資産形成はNISA・iDeCo」と役割を分ける方がシンプルで合理的です。ただし、必要な保障まで削ることは本末転倒であり、「目的のある保険だけ残す」という考え方を大切にしてください。

短期の値動きで積立をやめる

ドルコスト平均法(定期定額購入)は、価格が下落しているタイミングでも積立を継続することで「安い時に多く買える」効果が生まれ、平均取得単価を下げることが期待できる手法です。

積立を途中でやめてしまうと、複利効果が途切れるだけでなく「安値で多く買える機会」を逃しかねません。「下がっているから損した」ではなく「安く買えている」という長期投資の視点への認識転換が継続のカギです。

30代はこの「時間」が最も豊富な世代です。相場急落を「積立停止のサイン」ではなく「バーゲンセール」と捉えられるかどうかが、長期的な老後資金の差になります。

親の介護費を考慮しない

自分の老後資金を準備しながら、見落としがちなのが「親の介護費」の問題です。

生命保険文化センター「2024年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護にかかる月々の費用の平均は約9万円、一時費用(住宅改修・介護ベッド等)の平均は約47万円です。介護期間の平均は4年7ヶ月であり、介護費用の総額が500万円超になるケースも珍しくありません。

2025年には団塊の世代が75歳以上(後期高齢者)となり、5人に1人が後期高齢者という「大介護時代」に突入しています。30代の子世代にとっては、親の介護費用が「自分の老後資金の積立を中断させる要因」になるリスクがあります。

介護離職は自身の老後年金額にも影響するため、早めに家族で「誰がどう関わるか」を話し合っておくことが選択肢を広げることにつながります。また、親が介護保険に加入しているかどうか・要介護認定の申請方法を把握しておくだけでも、いざという時の対応がスムーズになります。

まとめ:30代が今日から始める老後資金づくりの6ステップ

老後資金の準備は、難しく考える必要はありません。まず以下の順番で動き出すことが大切です。

ステップやること
①まず確認ねんきんネットで年金見込額・退職金制度を確認する
②基盤を作る生活防衛資金(生活費3〜6ヶ月分)を普通預金で確保する
③仕組みを作る毎月収入の10%を別口座へ自動先取り設定する
④制度を使うNISAのつみたて投資枠でインデックスファンドの積立を開始する
⑤節税も活用余裕が出てきたらiDeCoで節税しながら老後資金を積み上げる
⑥定期的に見直す年1回、目標額と積立ペースを確認・調整する

30代はまだ30年以上の運用期間が残っています。「いくら必要か」という正解は人によって異なりますが、「今日から始めること」に遅すぎるということはありません。まずは自分の「数字」を把握するところから、一歩踏み出してみてください。

30代の老後資金についてよくある質問

最後に、30代の老後資金についてよくある質問について回答します。

30代の老後資金はいくら必要ですか?

生活水準や世帯状況によって大きく異なります。最低限の生活を送る単身世帯の場合、年金等でまかなえない不足分は30年間で概算1,000万〜1,500万円程度です。ゆとりある生活を望む夫婦世帯では3,000万〜5,000万円以上の自助努力が必要になるケースもあります。

「老後2,000万円問題」という数字は2019年時点の金融審議会試算をベースにしたものであり、自分の年金見込額・生活水準・退職金を反映した個別試算の方が実態に近い数字です。まずはねんきんネットで年金見込額を確認するところから始めましょう。

30代独身女性の老後資金はいくら必要ですか?

厚生年金加入の会社員女性で概算1,336万円〜、国民年金のみのフリーランス・自営業女性では2,668万円〜が老後の不足補填の目安とされる試算があります(個人の年金加入歴・生活水準・寿命により大きく変わります)。

女性の平均寿命は87.13歳と長いため、老後期間が長くなる分だけ準備額も多くなる傾向があります。キャリア中断の有無も厚生年金の受給額に大きく影響するため、キャリア設計と老後資金準備は一体で考えることをおすすめします。

30代で貯金100万円は少ないですか?

金融広報中央委員会の調査では、30代二人以上世帯の貯蓄中央値は約130万円、単身世帯の中央値は約300万円(2025年)です。100万円は中央値より少ない水準ですが、金融資産非保有世帯(貯蓄ゼロ)が単身30代の約32%存在することを踏まえると、「最低限の備えはある」水準とも言えます。

重要なのは平均と比べて焦ることではなく、「今日から仕組みを作ること」です。30代はまだ30年以上の運用期間があるため、今から始めることに十分な意義があります。

30代から老後資金を貯めても間に合いますか?

間に合います。35歳から65歳まで30年間、年利3%で月5万円を積み立てた場合、約2,894万円の資産形成が期待できます。 同じ条件で50歳スタート(15年間)だと約1,163万円にとどまることと比べると、30代スタートの優位性は明確です。

「間に合う・間に合わない」よりも「今始めることで、50代・60代の選択肢が広がる」という捉え方の方が実態に即しています。

30代はNISAとiDeCoのどちらを優先すべきですか?

属性によって異なります。

属性推奨の優先順位
会社員(企業年金あり)NISA → iDeCo(上限月2万円)
会社員(企業年金なし)NISA & iDeCo 同時活用が効果的
個人事業主・フリーランスiDeCo(月6.8万円まで)→ NISA
近い将来の大きな支出があるNISA優先(流動性確保のため)

個人事業主・フリーランスにはiDeCoをとくにおすすめします。 掛金の全額所得控除による節税効果が大きく、会社員より公的年金が少ない分を補う役割も担えるためです。ただし、iDeCoは60歳まで引き出せない点を念頭に置いたうえで、手元流動性と相談して判断することが大切です。

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